里中満智子(さとなか・まちこ)/16歳でデビュー。代表作に過去の女性天皇である持統天皇を描いた『天上の虹』など。日本漫画家協会理事長(写真:本人提供)
里中満智子(さとなか・まちこ)/16歳でデビュー。代表作に過去の女性天皇である持統天皇を描いた『天上の虹』など。日本漫画家協会理事長(写真:本人提供)

 確かに次世代の継承資格者が悠仁さまおひとりしかいないのは不安です。皇室活動の担い手が不足しているのも事実です。皇族数の減少の背景には、戦後の人為的な皇族数削減があります。1947年に皇籍離脱した旧宮家の方々のなかには、皇族としての品位を保ち、自らを律して暮らしている方もおられると聞き及びます。皇籍離脱から75年がたっているとはいえ、長い歴史から見ればたったの75年です。ご本人の意思次第ですが、そうした方に戻っていただくのは自然なことでしょう。

 力でその地位を確立したヨーロッパの王室とは違い、日本の皇室は権威と権力を切り離して歴史をつないできました。天皇が実質的な権力を握っていたのは天武天皇の御代や明治憲法期など、ごく短い期間だけです。現代においても、天皇は日本という国を外に向かって表すときの文化的な象徴と言えます。一時の民意で選ばれる、時に上品とは言えない政治家とは別に、権威を持った存在として国民統合の象徴となり、国のホストを務めることもできる皇室が続いてきたのはとても幸運なことだと思います。

(構成/編集部・川口穣)

AERA 2023年6月12日号