チャールズ国王の戴冠式のため英国へ出発する秋篠宮ご夫妻を見送る次女の佳子さまと長男の悠仁さま(5月4日)[写真:代表撮影]
チャールズ国王の戴冠式のため英国へ出発する秋篠宮ご夫妻を見送る次女の佳子さまと長男の悠仁さま(5月4日)[写真:代表撮影]

 皇位の安定的な継承が危ぶまれているなか、女性・女系天皇容認への社会的な機運が高まりつつある。一方、漫画家・里中満智子さんは悠仁さまがいるのだから、男系男子優先の原則は変えるべきではないという立場を取る。里中さんに歴史の重みとこれからの皇室のあり方を聞いた。AERA 2023年6月12日号の記事を紹介する。

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 皇族数の減少や安定継承の先行きについて、危機意識を持って準備することは大切です。ただ、長い皇室の歴史を見ると継承の危機はこれまでに何度もありました。507年ころに即位したとされる継体天皇は、天皇の血筋からかなり離れた傍系の男子でした。それも中枢から遠い地から迎え入れ、即位させたといわれます。一方、少なくとも今は、次の世代の継承資格者である悠仁さまがいらっしゃいます。過去の危機と比べてそれほど深刻な事態ではないと考えています。慌てて変えてもいいことはありません。落ち着いて見守ることが必要でしょう。

 皇位継承は男系男子優先で続いてきました。史実と思われる範囲に限ってもその歴史は1700年にのぼります。過去には8人10代の男系女子の天皇がいましたが、その多くは消去法で選ばれたり、幼い男子が成長するまでのつなぎだったり。天皇の子に男子がいなくても、先代や先々代の天皇ゆかりの男子を見つけて皇位につけてきました。なぜそこまで男系にこだわったのか理由は定かではありませんが、そうして紡がれてきた歴史がある以上、男系男子優先の原則は変えるべきではありません。

 過去に例もある通り、後継者がいない場合に、男系女子の皇族に皇位継承資格があるのは当然だろうと思います。しかし、後継者である悠仁さまがいるなかで、女性天皇・女系天皇について好き勝手議論するのは失礼ではないかと思っています。

 今の時代の、それもヨーロッパ的な価値観においては女系まで容認すべきという声が強いでしょう。ただ、現代の常識だけで積み重ねられた歴史を変えるのは疑問です。まして、感情論が議論をリードするようなことはあってはなりません。女性天皇・女系天皇を求める声の背景には、秋篠宮家への下品なバッシングも少なからずあるように思えます。

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