AERA 2023年6月12日号より
AERA 2023年6月12日号より

 ファイザー製ワクチンの投与量は、アジア諸国が参加していない国際共同第一相臨床試験に基づいて設定されている。この試験では、発熱や倦怠感といった副反応は用量が増えるほど増加。つまり、投与量を増やすほど副反応は強くなる。だが、世界各国が承認した投与量は人種、性別、体重にかかわらず、1回あたり30マイクログラム。小柄な人ほど副反応が強くなる可能性がある、と上さんは言う。

「日本人の成人女性の平均体重は約50キロ。一方、日本人男性の平均体重は約70キロ、米国人男性は約90キロです。日本人女性は米国人男性の1.8倍のワクチンが投与されていると考えることもできます」

■因果関係検証できない

 女性に副反応が多いのは、女性ホルモンの働きにより女性はもともと男性よりも免疫反応が強い傾向があるため、との指摘もある。だが、投与量を減らすと副反応のリスクは減るものの、免疫効果も下がる可能性がある。このため、主治医が個別に判断するしかない。上さんは女性や子どもの副反応リスクを考慮し、自院で受診する患者には説明の上、ワクチンの用量を適宜減らして投与してきたという。

 今回の調査で厚労省研究班は「症状とワクチン接種の因果関係の検証はできない」としている。これは上さんも同見解だ。一方で上さんは「致死的な症例と、それ以外は分けて議論すべき」と唱える。

 今回の報告対象のうち、死亡したのは3人、全体の2.5%にすぎない。厚労省の「副反応検討部会」に報告された接種後の死亡例は昨年12月までに累計1965人に上る。ワクチン接種と死亡の因果関係をめぐっては、22年8月に亡くなった女子中学生(当時14歳)を司法解剖した徳島大法医学教室が因果関係を認めたケースと、22年11月に亡くなった愛知県の40代女性が厚労省副反応検討部会で「ワクチンとの因果関係は否定できない」とされたのにとどまっている。

 厚労省は今回の調査を「第一報」と位置づけ、今後は個別事例を精査した「第二報」を予定している。

 上さんは「死亡者や重篤な副反応を示した人の体重も明示すべき」と提案し、こう続けた。

「夏場には感染拡大が予想され、ワクチンの追加接種が必要な局面も想定されます。韓国などアジア諸国との共同研究も進め、安全性を高める対策を早急に講じるべきだと思います」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2023年6月12日号

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