NHK大河ドラマ「どうする家康」で、徳川四天王の一人、本多忠勝を演じるほか、放送中のドラマ「ペンディングトレイン─8時23分、明日 君と」に主演する山田裕貴さんがAERAに登場。「面白かった」という声が聞きたい、スタッフの喜ぶ顔が見たい。そんな思いが原動力となっているという。AERA 2023年6月12日号の記事を紹介する。
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数多の俳優にカメラを向けてきた蜷川実花が撮影の手を止め、こう口にした。
「ワンランク上にのぼっていく人たちの“直前の瞬間”をたくさん目にしてきた。もっと上に行く人ならではのオーラが、いまの山田くんにはある」
そして、「1年前に撮ったときとは全然違う」と。山田は素直に喜び、「じゃあ、今日は前夜祭だ」と声を掛け合った。
放送中のドラマ「ペンディングトレイン─8時23分、明日 君と」に主演し、NHK大河ドラマ「どうする家康」では、本多忠勝役として強い印象を残す。はたから見れば、順風満帆。けれど、山田は自らが置かれた立場に少し戸惑っているように見えた。
「僕にもう少し語彙力があれば、もっとわかりやすくいまの気持ちを伝えられるのかもしれませんが、『僕の手には負えないところまで来てしまったな』という感覚はあります。色々な方が携わるようになり、昔のように『自分はこれがやりたい』という気持ちだけでは進められなくなった、ということなのかもしれません」
「ペンディングトレイン」はNetflixで全世界に配信されている。これまでとはスケールが違う。そのうえ、主演だ。
「めったにないチャンスで、何も起こせなかったとしたら、僕にはいったい何ができるのだろう、と考えるんです。この作品をきっかけに日本のドラマが注目されるようになったり、そんな大きな話でなくとも、身内以外の人から『話題になったね』と言ってもらったり、少しでも世界を変えられることができなかったら、なんのためにみんなで頑張ってきたのだろうと考えてしまう」
生身の人間として、自分だけの言葉を発していく。自分と闘い、迷い、葛藤している人間が醸し出す美しさが、いまの山田には確かにあった。(ライター・古谷ゆう子)
※AERA 2023年6月12日号