ドラマ、映画、バラエティーにエッセイの執筆。加えて、一昨年には歌手として再デビューを果たした松下洸平さん。才能の露出が多方面に広がり、注目と評価が高まる今の心境とは。AERA 2023年6月5日号の記事を紹介する。
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――自らを表現するメディアが多方面に広がっているが、どんなに忙しくなっても、優しく実直な人柄にブレがない。
松下洸平(以下、松下):2019年のNHK連続テレビ小説「スカーレット」に出演させていただいて以降、仕事の量が変わりましたが、最終的に僕がやることは、芝居をすること。そこはずっと同じですし、周囲のスタッフは駆け出しの頃から僕を知っている人ばかりで、特別扱いされないことも、ブレずにいられる理由ですね。
多くの人に見ていただいているということを意識するようになりましたが、一方で、良い意味で力の抜けた部分もいっぱいあるんですよ。今までは、ひとつひとつの現場で、それがどんなに小さな役であっても、どんなに短いシーンであっても、どこにチャンスが待っているかわからないという思いが強くて。それはそれはもう、ぐわーっと全力でやってました。常に「このワンシーンで人生が変わるかもしれない」と思って臨んでいましたから。それが今は、もうそんなに力む必要はない。決して傲慢な意味ではなく、自分で言うのはおこがましいのですが、多少なりとも自信がついたということだと思います。
力の抜けたお芝居とは、より生身の人間に近づいていくことでもあるので、勇気がいるんですけど、ここまでやってきた自分の蓄積を信じなくてはいけないなと思っています。
■あの10年があったから
バラエティーは本当に楽しませてもらっています。先日は、大ファンだったジャルジャルさんとの共演が実現しました。好きな芸人さんとのお仕事は、僕にとってご褒美みたいなもの。ゲラなのでずっと笑ってますね。
――2008年、21歳で「洸平」名義でCDデビュー。その後、俳優の道に進み、「スカーレット」に出るまでの約10年間を生き抜いたことが、今の支えとなっているという。
松下:あの10年がなかったら、僕は今ここにいません。思うようにいかない時期もありましたが、この仕事を続けたいという気持ちがあったし、何よりもその先にある成功を信じていました。いつかきっと光は差す、だから、やめないようにしなきゃ、と。具体的に出たい番組や共演したい方の名前、こんな仕事がしてみたい、と口に出してきました。言霊だけでやってきたわけじゃないですけど、とても大事なことだと思っています。