2月21日、ウクライナの首都キーウを前日に訪問した後、隣国ポーランドのワルシャワで演説したバイデン大統領。「民主主義のために立ち上がる」と語った(ロイター/アフロ)
2月21日、ウクライナの首都キーウを前日に訪問した後、隣国ポーランドのワルシャワで演説したバイデン大統領。「民主主義のために立ち上がる」と語った(ロイター/アフロ)

 3月10日、サウジアラビアとイランが中国の仲介によって、外交関係を再開することで合意しました。4月6日には両国外相が北京で久々の会談に臨みました。中国はサウジとイランの高官を北京に招待しています。ここでも中国は和平協定の調停をし、米国はまったく関与していません。なぜでしょうか。

 バイデンが呼びかけた「民主主義のためのサミット」に中東から参加した国はイスラエルとイラクだけでした。もしバイデンが言うように世界が民主主義国家と独裁主義国家の二つしかないとすれば、米国は中東諸国に対して「あなた方は我々の側にいない」と言っているに等しい。

 けれども中東諸国やグローバルサウスと呼ばれる新興国・途上国の最近の動きを見ていると、ウクライナ戦争に対する彼らの見方は中国に近いと言えます。戦争が早く終結し、対ロシア経済制裁が早く終わってほしいと思っている。もし米国が、世界は民主主義体制と独裁主義体制しかないと本当に考えているのなら、世界の民主主義国家に対してまだまだやるべきことがあると説得しなければなりません。民主主義こそが信じられているものであり、それを守るための努力をしなければならない。

 89年にベルリンの壁が崩壊したとき、旧東側は米国を「民主主義輸出国」の手本と見ました。でも今日そんな状況にはありません。米国のような国になりたいと思っている人は、どこにもいないのです。

(構成/国際ジャーナリスト・大野和基)

AERA 2023年5月22日号より抜粋