ウクライナ問題など様々な課題が山積するなか、G7広島サミットが19日に開幕する。準備万端で臨む岸田文雄首相は成果を出せるのか。AERA 2023年5月22日号の記事を紹介する。
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G7広島サミット(主要7カ国首脳会議)が19日に開幕する。会議の裏方を束ねるのが、外務省の小野啓一外務審議官(経済担当)。「シェルパ」と呼ばれ、各国代表との折衝を重ねてきた。岸田氏の出身校・私立開成高校の後輩で、外務省の課長のころから岸田氏の信任が厚い。2022年7月、それまでこのポストにいた安倍晋三元首相の秘書官経験者を駐インド大使に転出させ、小野氏を経済局長から昇格させたのは、岸田首相自身が決めた人事だ。
小野氏は、韓国や北朝鮮を担当する北東アジア課長を5年間務め、粘り強い交渉には定評がある。妻は同期入省の小野日子外務報道官。その小野氏が岸田首相の「分身」として米英仏独伊加の6カ国を駆け回り、各国と綿密に協議してきた。途中、岸田首相にはたびたび経過報告してサミットの議論の流れを固めた。準備万端の岸田外交がどこまで成果を出せるのか、最終日の21日には結果が分かる。政権が勢いづくか、行き詰まるか。岸田氏の勝負どころである。
■喫緊はウクライナ
広島サミットは本来のテーマである世界経済の安定に加え、短期、中期、長期の課題に直面している。短期では当面の喫緊のテーマはウクライナ問題だ。ロシアによる侵攻から1年余。ウクライナの反転攻勢が本格化する中で、G7各国がロシアへの非難を強め、ウクライナへの全面支援を確認する場となる。首脳宣言では「力による現状変更の試みは許さない」「核の威嚇は断じて受け入れられない」という強いメッセージが盛り込まれる見通し。米国などはさらなる武器・弾薬の供給、日本は戦後復興をにらんだ経済支援を打ち出す方針だ。ゼレンスキー大統領はリモートで参加し、支援を呼び掛ける。
中期的な課題としては、中国にどう向き合うかが焦点だ。
中国の習近平国家主席は、台湾への武力侵攻の可能性を否定しないなど覇権主義的傾向を強め、国内では人権抑圧を強めている。日本の中国駐在ビジネスマンらが拘束されるケースも相次いでいる。サミットでは、中国に対して「国際社会の責任ある一員として行動するよう求める」ことになる。ただ、フランスのマクロン大統領が台湾問題をめぐって「米中(対立)には追随しない」と述べるなど、中国との経済的結びつきが強い欧州と、中国との対立を強める米国との間には溝も出ている。岸田首相が欧米の合意点をどう打ち出すかがポイントだ。