さらに、事業者との基本協定には、事業者側は事実上いつでも撤退できると書いてある。今後、彼らは大阪府市に依存症対策規制を緩めろとか支援金を出せなどと法外な要求をし、嫌なら撤退だと脅すだろう。依存症が蔓延するか、府市の税金をむしり取られるか。いずれも悲惨な結果になる。
大阪には有能な人材も観光資源も豊富だ。知恵さえ出せば、カジノなしでジリ貧の道から脱する方策はいくらでも考えられるはずだ。
折しも、横浜市でカジノ構想の権化、菅義偉前総理らの横暴を市民の力で止めた地元保守の重鎮、藤木幸夫氏を描いた映画『ハマのドン』が公開中だ。藤木氏の「港で賭博はやらせない」という誇り高き信念の戦いが「民主主義の勝利」を呼んだ。賭場なき港の発展に繋げる知恵にも要注目だ。
一方、大阪の知事と市長は大阪の地盤沈下を止める知恵がなく、カジノで一発逆転を狙う。借金返済のために競馬で大穴を狙うギャンブル依存症患者と同じだ。「知恵なし、品なし、誇りなし」の維新コンビ。残念ながら、大阪には、頼れる「ハマのドン」は現れなかったようだ。
※週刊朝日 2023年6月2日号