AERA 2023年5月15日号より
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 岸田文雄首相は衆参5補選で4勝1敗だったにもかかわらず、「勝った気がしない」と言う。中身を見ると「薄氷の勝利」だった。AERA 2023年5月15日号の記事を紹介する。

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 この大型連休、岸田文雄首相はエジプトなどアフリカ4カ国とシンガポールを歴訪。議長を務めるG7広島サミット(主要7カ国首脳会議、5月19~21日)で「グローバルサウス」と呼ばれる途上国の意見を反映させるためだ。その首相の胸中の大半を占めるのはサミット後の政局、とりわけ衆院の解散・総選挙のタイミングである。一歩判断を誤れば政権が吹き飛んでしまう。先行きには多くの落とし穴が待ち受けている。

AERA 2023年5月15日号より
AERA 2023年5月15日号より

 4月23日に投開票された衆参5補選で自民党は「4勝1敗」と好成績だった。しかし、中身を見ると「薄氷の勝利」だったことが分かる。自民の衆院議員が政治とカネをめぐる問題で公民権停止処分となり、辞職したことに伴う衆院千葉5区は、野党の立憲民主党、国民民主党、日本維新の会、共産党などがそれぞれ候補者を擁立して自民の新顔女性候補を利する結果となった。衆院和歌山1区は、岸田首相の演説会場に爆発物が投げ込まれて混乱。岸田首相は選挙戦最終盤にも応援に入ったが、自民の前衆院議員は維新の新顔女性候補に及ばなかった。二階俊博元幹事長、世耕弘成参院幹事長という実力者を擁する和歌山での敗北は大きな痛手だ。

AERA 2023年5月15日号より
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 山口2区では、岸信夫前防衛相の長男が6万1369票で当選したが、民主党政権で法相を務めた無所属候補が「世襲批判」などを訴えて5万5601票を得て肉薄。「自民王国」の山口も安泰ではないことを示した。安倍晋三元首相の死去に伴う衆院山口4区は、安倍氏後継の元下関市議が当選したものの、旧統一教会問題を批判してきた立憲の元参院議員が元市議の半数近くの票を得て自民側を驚かせた。一方、参院の大分選挙区は自民、立憲の一騎打ちで大接戦だったが、341票という僅差(きんさ)で自民新顔が滑り込んだ。

 4勝1敗の結果について岸田首相は「勝った気がしない」と周辺に語っている。自らテコ入れした和歌山1区で力負けし、千葉5区は野党乱立の割には苦戦を強いられたからだ。岸田首相は全国の選挙情勢をめぐって、自民の森山裕選挙対策委員長と情報交換を重ねている。森山氏は、党内の中堅・若手議員の中には「風頼み」で地道な活動が足りない人も多いと報告。岸田氏は熱心に聞いているという。(政治ジャーナリスト・星浩)

AERA 2023年5月15日号より抜粋