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HEROZ社「BackgammonAce」のゲーム画面
HEROZ社「BackgammonAce」のゲーム画面

 SFの世界では、自律思考するロボット―鉄腕アトムのように自分で考え、行動するロボットは珍しくない。現実の世界ではそこまで到達していないが、確実に人工知能(AI)の進化は進んでいる。

 それがよくわかるのはゲームの世界だ。古くは、ファミリーコンピュータのゲーム「ドラゴンクエストIV」。これには戦闘を自動で行うAIが搭載されていた。いま思えば稚拙なものだが、1980年代後半に、数千円のゲームにAIが搭載されていたという点は驚くべきことだ。

 しかし、AIが人間に勝つことはまだまだ先だと思われていた。だが、97年に米IBMが開発したスーパーコンピューター「ディープ・ブルー」がチェスの世界チャンピオンに勝った。そして、今では「人間がコンピューターに勝つのは難しい」と言われるまでになっている。

 一方で、手駒の使い方で勝敗が決まる将棋は、「チェスではコンピューターに勝てなくても、将棋のような複雑なゲームではまだ人間の方が上」と言われてきた。

 だが、残念ながらその人類の牙城も崩れつつある。2012年から始まった「電脳戦」では、第1回で、米長邦雄・永世棋聖(故人)がAIに敗れている。さらに第2回、第3回でもプロ棋士が負け越している。

 とはいえ、まだ「ゲーム」という限られた世界でのこと、アトムのようなロボットが登場するのは遠い未来の話になりそうだ。だが、ちょっとおかしな現象が起こっている。世界最古のボードゲームの一つ「バックギャモン」のプロ選手を「AIを搭載したバックギャモンゲーム」がスポンサーとなっている。

 日本人初のプロバックギャモンプレーヤーである望月正行選手は、2010年、14年に世界ランキング1位に輝いたトッププレーヤーだ。そして、彼を資金面でサポートしているのが、HEROZ(ヒーローズ)株式会社のスマートフォンアプリ「BackgammonAce(バックギャモンエース)」である。

 スマホアプリというと、お手軽な印象を受けるかもしれないが、世界最強といわれるAIを搭載したオンライン対戦バックギャモンゲームだ。イギリスやドイツなどではボードゲームランキングで1位を獲得するなど、高い評価を受けている。

 シンプルに考えれば、「ゲーム会社がバックギャモンプレーヤーのスポンサーに付いた」という構図に過ぎないが、“バックギャモンプレーヤーのスポンサーが、AIゲーム”という、不思議な構図でもある。「自分はAIのバックギャモンで強くなった」と公言している望月選手。AIとの対戦を通して自己研鑽に励み世界一になったのだから、そういった意味では「最強の師匠がバックに就いている」とも言えるだろう。

 AIも成長すれば、「ただ考えることができる」から脱却し、「考えて、何かに特化する」といった段階に到達できる。妄想を働かせてみると、ロボットが人間のスポンサーに付くことがあたりまえになる未来はもうそこまで来ているかもしれない。