室井佑月
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 作家・室井佑月さんは、衆議院法務委員会で可決された入管法改正案と、反対する立憲民主党の対応に憤りを露にする。

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 4月28日の衆議院法務委員会で、入管法改正案が可決された。これは、2年前に国会に提出され、ウィシュマ・サンダマリさんが名古屋入管に収容中に亡くなるという事件があって廃案になっていたものだが、今国会にほぼ同じ形で再度提出され、審議がされていたものだ。

 今までは難民申請中は強制送還されることがなかったのに、この法律が成立したら、3回目以降の申請者や、3年以上の実刑に処せられた人、テロ犯と疑われた人は難民申請中でも強制送還されることになる。

 そりゃあたしも、どっから見ても難民じゃない人とか、殺人犯とか、強制送還がやむを得ない人がいるのはわかる。けれど、母国で迫害に遭い、命からがら逃げてきた人を、十分な証拠がないからといって、疑わしいという理由だけで国に送り返していいのか。それをされたら、命を失う人もいる。そもそも日本の難民認定数は、2021年で74人。ドイツの4万人やカナダの3万人に比べたら、少なすぎる。

 それに日本には、日本で生まれ育って日本語しか話せないのに在留資格がない子供たちが201人もいる。この子供たちやその親が、強制送還されたら大変だ。

 今日本は、戦争に備えてどんどん防衛費を増やしている。戦争とは負けることだってあり得る。私たちだって、いつ難民になり、国外に避難するかもしれないのだ。日本がきちんと難民を受け入れることは、その時日本人が受け入れられる世界を作るってことだ。究極の安全保障じゃないか。

 けれど、なんだかなぁ。この法案審議では、野党の立憲民主党の対応もわからなかった。せっかく修正案で一歩前進しそうになったのに、「絶対反対!」を貫くために修正案を蹴ってしまった。

 その結果、政府原案──難民の人を十分な審査をせずに強制送還してしまったり、子供と親を引き離し、言葉も通じない国に送ってしまう──そんな最悪なものが通ってしまった。

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