落語家・春風亭一之輔さんが週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「ランキング」。
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気がつくと昭和の話ばかりしています。
昭和53年生まれだから、昭和を10年ちょいしか生きてないのに、幼いころの記憶というものはなかなかしぶとい。
デジタルとかAIとか、もはやなくてはならないものかもしれないけど、なんか疲れます。アナログなものはホッとするし、ずーっと見ていられるの。
猿山のサルとか、滝の落ちる様子なんてのはずーっと見ていられるのです。
パタパタカタカタと変わるものもいいですね。電車案内の「つぎ 8:45 東京行」なんて掲示板は今はデジタル表示ですが、昭和は黒い板に白字で書かれたものがパタパタカタカタと音をさせながら変わっていました。
ドラマ「スチュワーデス物語」では千秋が見上げる空港の掲示板もそんなパタカタ系。千秋ってのは堀ちえみさん演じる主人公の名前です。
それを見て「あー、『ベストテン』のセットみたいだなー」と思ったものです……そうか、ベストテンの記憶が先なのか。
ベストテンってのはTBSの『ザ・ベストテン』ですよ。もうこれからは説明しません。義務教育じゃないんだから。私は歳の離れた姉が3人もいますので、テレビもだいたい同じモノを観ることになる。だからなんです、私が歳の割に古いことを知っているのは。
ベストテンのランキングのボードはパタパタカタカタのアレでした。
黒柳徹子さんの隣で久米宏さんが「今週の第○位っ!!」と叫ぶと、先週の曲名と歌手名と得点が記されたアレが、ドラムロールとともにパタパタカタカタと回りだすのです。
ドキドキしながらパタパタカタカタをジッと見つめる私と姉たち。回っているパタパタカタカタに目を凝らすと歌手名と曲名が微妙に見えたり隠れたり。自分のご贔屓の名前が見えると心の中で、ストップ!と唱えます。