確かに男女同権は憲法でも定められている。しかし、そこをいまだ納得していない人がいるから、浜田さんが本で指摘しているような差別事案が繰り返されるのだと思う。

 たとえば、女性の管理職比率と、企業の業績の相関関係を調べてみるというプロジェクトはどうだろうか? 仮に、女性の管理職比率が上がると、業績が下がるという相関関係が結果として出てきても、そこから問題を考えることができると思う。

 自分で企画をたてることの素晴らしさはそこにあり、今の新聞が袋小路になっているのは、SDGsにしても女性活躍にしても、歌舞伎の定番のように前提を疑わない企画がパターン化しているからだと思う。絶対正義というものはない。そこを疑うことで新たな進歩も生まれてくる。

下山 進(しもやま・すすむ)/ ノンフィクション作家・上智大学新聞学科非常勤講師。メディア業界の構造変化や興廃を、綿密な取材をもとに鮮やかに描き、メディアのあるべき姿について発信してきた。主な著書に『2050年のメディア』(文春文庫)など。

週刊朝日  2023年5月19日号