<当時の私は男性社会のルールにおもねるようにも思えて、すんなり理解した訳ではなかった>。が、しかし次第に会社側に立って考え、会社がゴーサインをだしやすいようなロジックを組み立てるようになった、と書いている。
女性役員が従っていたのは「男性社会のルール」ではなく、「駄目な組織のルール」だろう。やっぱり中身の結果で、周囲を説得させていくことができるのが、この仕事の素晴らしさだ、と言いたくなったんだけど、大所高所にたった論よりはずっと面白かった。
浜田さんは独立してから、女性の地位向上をテーマのひとつとして活動している。そこでひとつ元編集者として提案したい。
それは女性の地位が向上すると、どのような変化が組織や社会にあるか、そこを書いてほしいということだ。
「新人記者に向けて」という特集の中で共同通信の女性の社会部長が、「全国の地域ごとの男女平等の度合いをデータで可視化する」という「都道府県版ジェンダー・ギャップ指数」を記事配信する試みについて紹介している。
このジェンダー・ギャップ指数というのは、たとえば政治だと、議会の女性議員の数を男性議員の数で割る、つまり1に近いほうが男女平等だ、というわけだ。
実は、私はこの報道には不満だった。というのは、私が地方で読んだその記事は、女性議員の数や各分野の指数を数字として報道するだけで、なぜそのようになっているのか、が書かれていない。男性のほうが優れていると思っている人々が、いくらこうした記事を読んでも動かされることはないのではないか、と思ったのだ。
あとでその社会部長に確かめると、数字の意味を読み解いたものも4本出稿していたが、使った社は少なかったようだ。その4本をまとめたネットの記事も読んだが、そもそも女性比率が高いことで、どのような変化がその地域社会にあるのか、そこをデータ報道と足を使って独自にほりさげてほしいと思った。
日経電子版の「データで読む地域再生」(2021年5月14日付)では、全国の自治体別に管理職の女性割合の変化を、2010年から2020年まで地図上でクリックするとわかるようにしたうえで、女性管理職が増えた自治体というのは、実は人口減との相関関係があることを明らかにしている。<地方では若い女性が東京など大都市圏に流出、人口減と経済低迷に拍車をかける悪循環になっていた>