本書にはすごくタメになることが書いてあるのだが、いかにも冷笑しつつ水をぶっかけるような書き方に、「なんかこのヒト感じ悪いわ~」と本を閉じてしまう人が多いんではないか。でも、最後までぜひ読んでいただきたい。
まず、愛とか信頼とか、いわゆる「絆」がもてはやされてる現在の風潮に「いかがなものか」と疑義を呈している。私も「花は咲く」を歌ってる「絆」好きの人とは友達になれる気はしないし、絆という言葉なんて、そう言ってれば気がすむためのアリバイのような言葉なんじゃないかと思っている。著者の中川さんはネットニュース編集者で、中川さんと私は考えをほとんど同じくしている。
この本に書いてある「タメになる重要なこと」のひとつは借金の話だ。借りるほうではなく貸すほう。人に金を貸してくれと言われて、いやいやながら貸すという経験はあるだろう。中川さんは自分がお金を貸した八つの例を書いている。中川さんの場合、1840万円を貸して、戻ってきたのは1020万円である。株式投資をしている友人に、「元本は保証する」といわれて750万円を出資するが、友人はITバブルでスッカラカンになり、友人に「縁切るよ」と告げ「関係終了」となったことも書かれている。
投資金を貸すのは心が重い。踏み倒されたら金以上のものを失うし、返ってきても何かしこりが残る。できれば断りたい。なら断ればいいではないか。そうはいかない。借金とは「深い関係にある者同士にしか発生しないもの」だからだ。ここは本書でも太字になっている。ほんとにその通りで目からウロコがおちる。「断りづらい相手」だから言い訳に苦しんだり貸しちゃったりするのだ。そして中川さんは言う。「借金を申し込まれるような深い仲にならぬよう、浅い付き合いを心がける」
身も蓋もないが、絆の少ない人生のほうが長い目で見て人生を豊かにするし幸福である、ということです。
※週刊朝日 2015年2月6日号