※写真はイメージです(Getty Images)
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 生徒たちの未来には関心を向けず、その上にある教育委員会や教育長ばかりを見ている校長がいる。校長職を退任後、校長・副校長・教頭研修に関わり、多くの小中高校を巡った教育改革実践家の藤原和博氏は、守りに徹し過ぎて、もはや好奇心も向上心も失せてしまった校長は全体の9割も存在すると指摘。守りの校長は「現場から早く出ていってほしい」と厳しい言葉を投げかける。同氏の新著『学校がウソくさい 新時代の教育改造ルール』(朝日新書)から一部抜粋、再編集し、「攻め」の校長と「守り」の校長の違いを紹介する。

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■攻めの校長と守りの校長

 上しか見ていない校長がいる。

 組織の山脈への目線だ。

 その先には教育委員会と、上司である教育長がいる。校長の人事権も予算権も、その教育長が握っているからだ。

 保護者に問われれば、年度の方針についての答えを即座に返してくるだろう。「確かな学力」や「豊かな心」、「健やかな体」や「世界で活躍できるグローバルな人材を」などの美辞麗句を並べるかもしれない。児童生徒向けの朝礼では、道徳的な訓示もするだろう。

 でも、実際には異なる。自分の学校の生徒たちの未来には関心を向けず、その上にある組織ばかり見ている校長がいる。

「よし。児童生徒の未来を拓くために、自らリスクを取ってチャレンジしよう」

 という校長職本来の気概などさらさらないのである。こういうウソくさい校長が9割を占めていると思った方がいい。

 杉並区立和田中学校の校長職を退任後、私は、つくばの教員研修センターで校長・副校長・教頭研修に7年間関わった。また、大阪府知事特別顧問として関わった2008年からの大阪府の教育改革では、40日間で55校の小中高校を巡った。さらに佐賀県武雄市、奈良市の教育改革に携わり(2016~2018年は奈良市立一条高校校長職)、2022年度には、山梨県知事特別顧問として40日間、千葉県知事特別顧問として20日間、それぞれの県の10校前後を授業しながら回った。この15年で1800回を超える講演会や研修講師を務めているが、その半分は教育講演会だ。

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攻めのマネジメントができる校長