『めちゃイケ』の前身となったフジテレビの深夜のコント番組『とぶくすり』には、オアシズの中から光浦だけが出演することになり、大久保は除外された。その理由は「光浦は笑えるブスだが、大久保は笑えないブスだから」だという。まあ、そういう時代だったのだ。

 その後、『めちゃイケ』にも光浦だけがレギュラー出演することになったのだが、途中から「普通のOL」として大久保が出演するようになり、面白さを認められてレギュラーに加わった。さらに、大久保はこの番組だけにとどまらない活躍をするようになり、冠番組を持つほどになった。

 もともと地元の同級生だった2人が、運命に翻弄され、勝手に競わされ、激しいデッドヒートを繰り広げ、ライバル心を抱かされるようになっていた。それぞれの中でも、時期によって嫉妬心を含むさまざまな感情が交錯していたようだ。

 久しぶりにテレビに出た『さんま御殿』で「大久保さんのバーターで何とかねじ込んでもらって」と明るく語る光浦は、憑き物が落ちたようだった。

 最近、海外に行く芸人が増えている。渡辺直美、ピースの綾部祐二、オリエンタルラジオの中田敦彦などがその代表格である。彼らが海外に行く理由はそれぞれだが、いずれにも共通しているのは、自分らしい生き方を突き詰めた結果、そこにたどり着いているということだ。

 光浦の場合、彼らより年齢を重ねていることもあり、そこに先行き不安が加わる。この先、芸能人としてどこまでやっていけるのかという悩みもあって、思い切った決断をしたのだろう。

 一時帰国してテレビやラジオにちょくちょく顔を出すというのは、芸能活動の戦略としても悪くないような気がする。たまにしか出ないことで希少価値も生まれるし、海外生活のことを語れるし、何よりも本人が生き生きしているところを見せられる。

 一般社会でも終身雇用制が崩壊しつつある時代に、芸能界で長く生き残るのはますます難しくなっている。テレビの視聴者は常に新しいものを求めるので、年齢を重ねるほど椅子は減って競争は激しくなる。

 そこからあえて一歩降りた光浦が、自分らしい生き方をしていることに勇気づけられる人も多いだろう。芸能人とはどこまでも自分が自分であることを売りにするものなのだ。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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