【旗手怜央】

 とにかく充実のシーズンだった。スコットランドの強豪セルティックで絶対的な地位を築き、そのインテリジェンスとセンスで中盤からサイドバックまで幅広いポジションを務め、ピッチ上のありとあらゆるスペースに顔を出しながらチームの原動力に。公式戦45試合で9ゴール11アシスト、今季最優秀選手に推す声も止まらない。国内三冠達成は彼の力がなければあり得なかった。現地メディアはワールドカップのメンバー落選を連日のように取り上げていたが、それも納得のパフォーマンスをシーズン通じて披露している。

 そして迎える今夏の移籍市場、おそらくまだ正式に接触はしていなくとも、興味を持っているクラブは多数存在するはずだ。公式戦34ゴールと抜群の決定力を見せた古橋亨梧(28歳)よりも、現代サッカーにおいて求められる幅広い能力とインテリジェンスを持つ旗手の方が、年齢的(25歳)にも、ポジション的にも、移籍金的にも(『transfermarkt』の評価額は約10億円)、スカウティングに引っかかりやすいだろう。

 旗手の移籍先として、まず1番に挙げられるのはトッテナムだ。恩師アンジェ・ポステコグルー監督の就任が決まった中、新監督が自身のスタイルをよく知る選手を欲しがるのは容易に想像できるし、補強ポジションともマッチする。移籍金も安価だ。すでに『デイリー・メール』などの一部メディアは、状況を注視していることを報じている。問題は就労許可になるだろうが、セルティックの今季の成功から発給される可能性も十分にある。

 なおシーズン中にブライトンへの移籍が騒がれ、リーグ優勝決定直後のセレブレーションに姿を見せなかったことから「移籍に向けてブライトンの試合を見に行った」との憶測が流れたこともあったが、本人は「用事があっただけ。深読みしすぎです。試合は家で見ました」ときっぱり否定。また「技術面とフィニッシュを改善できれば来季はもっと争える」とし、来季チャンピオンズリーグでのリベンジを誓っている。この言葉をそのまま読むとトッテナム移籍の選択肢は除外されそうだが、現代ではプレミアリーグが選手にとって同じくらい魅力的なのも事実だ。セルティックでの居心地の良さを感じていることを話す旗手だが、どんな可能性があってもおかしくはない。それほど素晴らしいシーズンだった。

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欧州1年目で得点を量産したFWも