【上田綺世】

 海外挑戦初年度でこれほど結果を残した選手はかつていただろうか? 序盤はチーム間の相互理解や起用ポジションの問題から苦しんだが、8月末の初ゴールで信頼を確かなものに。そして失意のワールドカップを終えると、その得点力が覚醒。毎試合のようにゴールを決め続け、終わってみればリーグ戦40試合で22ゴールを奪ってみせた。フィジカル面でも問題なく適応すると、抜群のシュートテクニックで信頼を絶対的なものにしており、今ではチャンスになればチームメイトは必ずと言っていいほど上田を探す。また憎らしいほど冷静なPKも大きな武器だ。欲を言えば得点王を獲得したかったところだが(最終的に首位とは5ゴール差の2位)、文句のつけようがないシーズンであった。

 そんな24歳のストライカーを他クラブが放っておく訳がない。ミロン・ムスリック監督は「誰が喜んでいるかって? 我々のスポーツディレクターだよ。すでにお金を数え始めているよ」と語り、クラブも加入時から市場価値が4倍に跳ね上がった上田を売却する気満々だ。地元メディアではブンデスリーガやプレミアリーグ行きも伝えられているが、最も可能性が高いのはセルクル・ブルッヘの姉妹クラブであるモナコだろう。セルクル・ブルッヘのスポーツディレクターを務めるカルロス・アヴィーニャ氏は、4月にフランス『GFFN』の取材に対しこう語っている。

「我々はモナコのような巨大な家族の一員であるからこそ、世界中のスカウト網から報告が届く。そして将来的にモナコや5大リーグで活躍できるタレントを探す。上田のようにモナコ移籍を目標として外部から補強できるような選手もいる。良いプレーができれば、いつだってモナコ行きのチャンスは広がっている。彼は素晴らしいし、間違いなく次のステップはできている。モナコへ行くのか、他クラブへ行くのか、それはモナコの首脳陣が決めることだ」

 エースであるベン・イェデルの年齢(32歳)などを考えれば、モナコが上田を欲しがってもなんら不思議ではないし、現時点で唯一具体的なクラブ名として挙がっている移籍先候補だ。しかし前述の通り、モナコは体制変更で将来はまだ不透明な部分も多い。また、来季はヨーロッパカップ戦に出場できず、仮に出場クラブから声がかかった場合は本人がそちらを選択することは十分に考えられる。いずれにせよ最高のシーズンを過ごしたことで、今夏の移籍市場で我々ファンは様々な期待をふくらませることができるだろう。彼のさらなる飛躍を期待しながら、マーケットを楽しみたい。

(文・三上凌平)