そういう時代の中では、頭が固くて融通の利かない「頑固親父」然とした当時の上岡さんのようなキャラクターのタレントは、活躍の場が与えられることはなかなかないだろう。

 実のところ、上岡さんが理想としていたさんまや鶴瓶ですら、若い頃は今よりもっととがっていて、数々の問題行動を起こしていた。さんまはトーク番組で若い女性アイドルを泣かせたりしていたし、鶴瓶もテレビやラジオの本番中に怒り出したりしていた。

 でも、彼らはその後に軌道修正をして、何事もなかったかのようにテレビの世界に馴染んでいった。上岡さんもやろうと思えば同じことができたのかもしれないが、本人にその気はなかったのだろう。自らの衰えを感じていたこともあり、潔く身を引いた。

 かつてのテレビ界には「大人の鑑賞に堪えるタレント」というのがいた。その1人である上岡さんが亡くなったことで、改めてそういう時代がもう遠い昔になってしまったことに気付かされた。上岡さんのご冥福をお祈りします。(お笑い評論家・ラリー遠田)

著者プロフィールを見る
ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

ラリー遠田の記事一覧はこちら
暮らしとモノ班 for promotion
ミドル世代向け!露出しすぎないおしゃれ・機能的なレディース水着10選