■制度の見直しが必要
「一気に伐採面積を増やし、そこにただでさえ通常の苗より生産コストの高い、花粉の少ない苗木を植えても育たず、芋づる式に対策コストがかさむのは目に見えています」
そう話す淺田さんが懸念するのは伐採のみが進み、植え替えが進まないリスクだ。
「補助金が出れば伐採に必要な人手は確保できるかもしれません。ただ、林業で重要なのは伐った後に植えることです。植えるためのコストが伐採にかかるコストを上回ってしまうため、植え替えや伐採も進まないのが実情です」
淺田さんは言う。
「政府の数値目標の先に待っているのは、はげ山続出のリスクです。気候変動の観点からも災害防止の観点からもはげ山を増やすのは絶対に避けるべきです」
一方、前出の速水さんも「苗木を植えないで放置しても広葉樹が自然に生えてくる、と言う人もいますが、30年経ってようやく、ちょろっと生えるぐらい。その間のリスクが非常に高い」と警鐘を鳴らした上でこう訴える。
「国はよほど腹をくくって木材の需要喚起を図る必要があります。でないと、税金を使って林業を疲弊させて終わり、ということになりかねません」
速水さんは森林所有者と木材の消費者という木材市場の川上と川下にメリットが感じられる制度の必要性を強調する。
「森林所有者に儲けが出れば、伐採した後に苗木を植える意欲を回復させられます。間伐や下刈りも補助金目当てではなく、合理化のインセンティブが働きます。木材を使用した建築の施主にポイントを付与する還元制度も有効でしょう」
(編集部・渡辺豪)
※AERA 2023年7月3日号