NPO法人かるがもCPキッズで始めたピアサポートプログラム「ひまわり」のホームページ。複数の当事者ママがピアサポーターになり、相談希望者の方とグループトークを行っています。(撮影/江利川ちひろ)
NPO法人かるがもCPキッズで始めたピアサポートプログラム「ひまわり」のホームページ。複数の当事者ママがピアサポーターになり、相談希望者の方とグループトークを行っています。(撮影/江利川ちひろ)
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「インクルーシブ」「インクルージョン」という言葉を知っていますか? 障害や多様性を排除するのではなく、「共生していく」という意味です。自身も障害のある子どもを持ち、滞在先のハワイでインクルーシブ教育に出合った江利川ちひろさんが、インクルーシブ教育の大切さや日本での課題を伝えます。

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 6月になりました。私が運営しているNPO法人かるがもCPキッズ(脳性まひの子どもたちとパパママの会)には、「ひまわり」というピアサポートプログラムがあり、ひまわりを立ち上げてから、今月で5年が経ちました。

 ピアサポートの「ピア」は仲間という意味であり、文字どおり、障害のある子どもを育てている先輩ママや当事者がサポーターとなり、不安や悩みを聞きながら相談に乗るシステムです。ひまわりのピアサポーターは、特別支援教育がご専門の大学教授から研修を受け、後輩ママたちの相談支援を担当しています。現在は神奈川県社会福祉協議会から活動助成金をいただき、無料で相談を行っています。

 私がひまわりを立ち上げた2018年は、日本ではまだピアサポートという言葉は一般的ではありませんでしたが、現在では多くの分野のNPO法人や自治体がこのシステムを導入しています。

 今回は、ピアサポートについて書いてみようと思います。

■障害児育児の実体験

 私が社会福祉を学んだ大学の授業では、ピアサポーターがアルコールや薬物の依存症の当事者グループの中で活躍している場面をよく見かけました。専門家のアドバイスだけではなく、当事者が自分の経験を語ることにより、相談者には共感が生まれ、サポーター本人には自信が付くというお互いのメリットがあるのだと思います。どんなに知識を積んでも、やはり実体験とは違います。相談者にとっても当事者である先輩は親近感がわき、専門家には言いにくいことも話せるのかもしれません。

 障害児育児のピアサポートにも、この「実体験」がとても重要だと思っています。

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江利川ちひろ

江利川ちひろ

江利川ちひろ(えりかわ・ちひろ)/1975年生まれ。NPO法人かるがもCPキッズ(脳性まひの子どもとパパママの会)代表理事、ソーシャルワーカー。双子の姉妹と年子の弟の母。長女は重症心身障害児、長男は軽度肢体不自由児。2011年、長男を米国ハワイ州のプリスクールへ入園させたことがきっかけでインクルーシブ教育と家族支援の重要性を知り、大学でソーシャルワーク(社会福祉学)を学ぶ。

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はじめは泣いていたママも……