脳性まひは、出生前後に赤ちゃんの脳がダメージを受けたために起きる運動機能の障害です。障害の程度はそれぞれですが、生まれて来た赤ちゃんの病気の告知を受けた時のショックや、社会で生活する心細さ、「障害」と書いてある書類を目にするたびに「わが子は障害児なんだ…」と思い知らされる苦しさなどは、経験しないと奥底まで理解しあうのはなかなか難しいと思います。

 ひまわりの相談を利用する方の大半は、周りに障害のある子どもを育てている家庭がなく孤独を感じて連絡をくれるので、このような「障害児育児あるある」を一緒に話すだけで、はじめは泣いていたママに笑顔が戻るケースもよくあります。ご家族であっても、夫(子どものパパ)や両親(子どもの祖父母)とは考え方が違ったり、不安や悩みに対し「大丈夫」や「考えすぎじゃない?」という言葉で話が終わってしまう葛藤などは多くのママたちが経験していることであり、そんな時も“あるある”話をするだけで、「こんな気持ちを抱えているのは自分だけではないんだ」と安心してもらえるようです。

■すべてが不安だった頃

 以前、ひまわりのピアサポーター5人で「どん底話」というタイトルの動画を撮影して、限定公開でYouTubeにアップしたこともありました。今では小学生~高校生になった子どもたちがまだ赤ちゃんだった頃には、すべてのことが不安で自分だけが不幸なように感じてしまったこと、障害が少しでも軽くなるように、良いと言われたことは一生懸命に試したことなどは、全員共通の話題となりました。そして当時は泣いてばかりいたママたちも、いつの間にか苦労を笑いに変えることができるくらい強くなっていたというのも共通点でした。

 でも、そこに至るまでには何年もの時間が必要で、闇の中にいる時間は本当に心細いものです。そんな時に、SNSとは違い、オンライン上で顔が見えるサポーターに直接相談できるしくみの存在はとても大きいと思っています。

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江利川ちひろ

江利川ちひろ

江利川ちひろ(えりかわ・ちひろ)/1975年生まれ。NPO法人かるがもCPキッズ(脳性まひの子どもとパパママの会)代表理事、ソーシャルワーカー。双子の姉妹と年子の弟の母。長女は重症心身障害児、長男は軽度肢体不自由児。2011年、長男を米国ハワイ州のプリスクールへ入園させたことがきっかけでインクルーシブ教育と家族支援の重要性を知り、大学でソーシャルワーク(社会福祉学)を学ぶ。

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