「生放送のように、45分間の収録時間を守って、合間にCMの時間を入れたりして、編集は一切しないでほしいとお願いしました。編集の手を加えると、ゲストは『ここをカットしてください』と言いたくなるだろうし、ディレクターは『あそこを絶対に残したい』と思ってしまう。そうなると、局やプロデューサーの意向で、ゲストの発言をいかようにも変えて伝えることができてしまいます。それは嫌だったので、話が終わらなかったら、また来ていただきましょうよ、と。私自身、インタビューを編集されることで、ずいぶん『黒柳さんはおしゃべり』みたいに誤解されることがあって。でも、本当は人の話を聞くことのほうが好きなの」
第1回のゲストは森繁久彌さん。当時は、まだ大学生だったラビット関根(関根勤)さんのクイズコーナーもあった。
「関根さんが、宇野重吉さんとか嵐寛寿郎さんなんかのモノマネを、ご本人の前でやるのがおかしくて(笑)。クイズコーナーも視聴者参加型で盛り上がったのですが、しばらくして、『もっとゲストの話が聞きたい』という要望が視聴者から殺到したんです。人ってそんなに他の人の話が聞きたいのか、と私自身がビックリしました」
スタートから1年後、クイズコーナーは別番組として独立し、「徹子の部屋」は45分間みっちり、ゲストの話を聞くスタイルに。当時は俳優としてテレビドラマにも出演していた徹子さんだったが、あるとき、「もう女優の仕事は舞台だけにしよう」と決意させる出来事に遭遇する。
「若尾文子さんと一緒のドラマで、ほろ酔いの芸者さんの役をやったんですが、その演技を見ていた小道具さんが、私に『本当は飲んでるんでしょ』と言うんです。私のほろ酔い演技がよっぽどうまかったんだと思うけれど(笑)、その徳利の中身は、小道具さんが入れてくれたお水だったのに、『あなたが入れたお水を飲んだだけ』と言っても、全然信用してくれない。こんなに身近な人が、私の演技に騙されるなら、悪女の役なんかしちゃったら、『徹子の部屋』で、『悪女がゲストに話を聞いている!』って思われるかもしれないでしょう? それで、女優としては、もうテレビに出ないことに決めたんです」