そして家族や友人「以外」からの力を借りるときには、お金が必要になります。お金を多めに持っていれば、「どの人(会社)のどの力をいくらで借りるか」ということを自由に選べるようになります。

 スーパーへ買い物に行き、夕飯に使う野菜を買うときの場合で考えてみましょう。

・見切り品、または特売品の野菜「しか」買えないのか

・オーガニック野菜まで含めて、いろいろな選択肢の中で「自分の中で最もバランスがいいもの」を買えるのか

 自分の都合に合わせてどちらからでも選べるほうが、日常的に行くスーパーでも満足度は変わります。常に、値段が高いオーガニック野菜だけを買う必要はないということも重要なポイントです。

 人との付き合いに関しても、お金がないと細かい面で不自由になるかもしれません。食事や旅行に誘われたとき、持ち合わせがさみしかったらどうでしょう。

 本当はお金を理由に断りたいのですが、「お金がないから行けません」とは自尊心の面でなかなか言えない人も多いと思います。結局、他の予定が……などと違う理由をこじつけて断ることになります。

 住宅ローンや車のローンなど一点集中型の高いローンを組むことを私が勧めないのは、自分の可処分所得(自分の収入のうち税金などを引いた手取り)の中で、あまりにも配分の高い項目ができてしまうと、それ以外の選択肢が狭まるからです。

 よく聞くのが「身の丈に合わない住宅ローンを組んだため、他にほとんどお金が使えなくなる」というケースです。

 子どもの小遣いが減ったり、家族旅行に行けなくなったり。結果、子どもも含めて人付き合いが不自由になることもあります。

 最終的に自宅は残りますが、過度な節約生活は子どもの成長にいい影響を与えないのではないでしょうか。

「収入は安くても、やりがいがあればいい」という考え方も、程度問題です。あまりに低賃金で働き続けると、自分の将来の選択肢を削ってしまいます。

 なるべく上手にお金を稼ぎましょう。そしていろいろな選択肢の中で、無駄遣いせずにコストパフォーマンスを考えながら消費するイメージを持ってください。そうすれば、お金に振り回されなくなります。

構成/中島晶子(編集部)

『AERA Money 2023春夏号』から抜粋

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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