境界知能であることが判明したとき、「同じように悩んでいる人も多いのではないか。境界知能を多くの人に知ってもらいたい」とYouTuberとして動画で境界知能の悩み、仕事やプライベートで困ったときの対処法などを積極的に配信するようになった。その活動がメディア関係者の目に留まり、2021年にインターネットテレビの境界知能の特集番組に出演。両親はこの特集を見て、なんばさんが境界知能であることを初めて知ったという。

「気づけてあげられなくてごめんね」と母親から連絡があり、「気にしなくていいよ」と伝えた。

「境界知能は統計学で約14%いるといわれています。30人のクラスだったら、平均で4人はいることになります。僕は大人になって気づきましたが、幼少期に分かればいろいろな対応ができます。子どものときに専門家が手掛けた認知能力を高めるトレーニングをすることで、勉強に遅れが出ないなど成果が出ているケースも少なくない。大事なのは家族、学校など周囲の理解です。子どもが境界知能と分かっても、決して周りの子どもに劣っているわけではありません。健常者に比べてできないことはありますが、集中すると凄い才能を発揮するケースがあります。個々に合わせた生き方を見つければ、境界知能の人たちも幸せになれる。人生は自分が主役なので、我慢しないで行動してほしいです」

 なんばさんは、「自分も境界知能では」と悩む人たちの電話相談にも乗っている。

「境界知能の方は無自覚なケースが多いんです。日本の社会はIQテストを受けることに抵抗がまだまだあると思いますが、自分を理解するためにテストを受けたい人が受けられる環境を整備する必要があると思います。境界知能を本人、周りが理解することで生きやすさが変わると思う」

 なんばさんは最近、料理を作ることにハマっているという。「自分ができることにいろいろ挑戦してみたいんです」。私たちは誰もが幸せに生きる権利があることを、改めて実感させられた。

(今川秀悟)

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