2015年1月で、阪神・淡路大震災から20年。現在、神戸の街に慰霊のモニュメントが残るが、当時の様子を想像するのは年々難しくなっている。そんな復興の歩みをスマートフォン(スマホ)でたどるプロジェクトが始まった。
神戸新聞社(本社・神戸市)は、カメラアプリ「タイムマシンカメラ Yesterscape」(iOSのみ対応・無料)を利用した、写真プロジェクト「阪神・淡路大震災 on Yesterscape」を開始した。
このプロジェクトは、現在の風景と、過去に撮影された写真を重ねて見られる「タイムマシンカメラ Yesterscape」のAR(拡張現実)機能を応用したもの。神戸市中心部の三宮・元町周辺の約100地点でアプリを使うと、震災当時の写真と現在の風景を比較できる。
例えば、JR三ノ宮駅北側の広場にスマホを向けると、現在の風景と重なって、地震で崩れた「神戸阪急ビル」(解体後、再びビルを建設)や商店街(現存)などの写真が表示される。登録写真は、9割以上が震災当日に撮影されたもので、当時の街の雰囲気や被害の大きさが伝わってくる。
このプロジェクトは、数多くの震災の写真を保有する神戸新聞社が、震災20年の節目を機に、より多くの人に当時の様子を知ってもらえないかと企画した。同社の担当者は「震災当時と現在の写真とを並べて展示するよりも、よりリアルに20年間の街並みの変遷や復興の様子を体感してもらえ、関心を持っていただけると考えた」と話している。
神戸新聞は、このプロジェクトと併せて、「阪神・淡路大震災デジタルマップ」をホームページで公開している。地図をクリックすると、その地点の震災当時と現在の写真を見られる。このほか、地域住民のメッセージも読める。
震災から20年が経過し、記憶の風化を懸念する声も多い。そんななか、AR技術を利用したこのプロジェクトは、震災を知らない若い世代にもその経験や教訓を伝える助けとなりそうだ。神戸まで足を運ぶ機会があれば、アプリを使って、復興の足跡をたどってみてはいかがだろうか。