仙台在住の著者が河北新報に連載したエッセイの第二集。震災の記憶がまだ鮮明だった第一集とは違って、穏やかな日々の営みが綴られている。
 道に迷ったらしいレース鳩、光を求めて飛んできた虫たち、道の一面を白く染めている小花の集落など、偶然に出会った生き物は著者の生活に彩りを与える。他にも、ふと頭をよぎる俳句、お気に入りのセーター、松本竣介の絵など著者の心を躍らせるものは限りがない。道端で拾った羽根を片手に『野鳥の羽根』という図鑑をのぞく姿など、五十歳過ぎの大人とは思えない旺盛な好奇心には脱帽した。
 妻と新聞紙の使い道についてあれこれ語り合っていると、断水が続いた震災の時に、水の節約に有効だったという当時の記憶が蘇る。俎板(まないた)に新聞紙を敷いたり食器の汚れを新聞紙で拭き取ったりしたのだ。時が経っても風化せず日常の中に入ってくる震災の記憶や毎日の些事に、著者は温かなまなざしを向けている。自ら撮影し、文章とともに掲載されている写真からも、そのような彼の視線はひしひしと伝わってくる。

週刊朝日 2014年11月7日号

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