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 様々なユニフォームに関する研究開発や調査を行っている公益財団法人日本ユニフォームセンターは、消防関連の防護服などを事業の柱の一つとしている帝国繊維(株)他の協力のもと、冷却ベストを開発した。この商品は独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)とのコラボレーションから生まれた「JAXA COSMODE」(JAXA宇宙ブランド)の製品だ。

 JAXAでは、日本が得意とする先端素材・縫製・被服設計・精密加工等の国産技術を集約し、「次世代先端宇宙服の研究」を進めていている。この次世代先端宇宙服は、過酷な宇宙環境でも対応することはもちろん、密封される宇宙服にとって熱を冷却する技術も重要となってくる。日本ユニフォームセンターは、この次世代先端宇宙服の研究に平成20年度から参画し、長年にわたるユニフォーム研究で培ったパターン設計や縫製技術で冷却下着の研究をサポートしてきた。

 今回発売された冷却ベスト「Cooling by the space technology 冷却下着ベスト型」は、この次世代先端宇宙服用冷却下着の研究成果を活用したもので、価格は税抜きで6万円。

 チューブを張り巡らせたベスト本体と、冷却水を循環させるポンプユニットからなり、備え付けのタンク内で氷によって冷却された水は、ポンプによってチューブ内を通りベスト全体へ届けられる。ベストに張り巡らされたチューブに4度前後の冷却水が循環することで、上半身が快適に冷やされ、暑熱下における熱中症対策に効果が期待できる。消防や防災など、暑い場所での作業や温度上昇の想定される防護服による作業、そして戸外の暑い場所の作業などでは特に効果を発揮する。

 日本ユニフォームセンター独自の試験結果では、このベストを着用した状態と、着用しない状態での着用服内の温度は6.7度の差異があり、疲労度合いにも大きな差が見られた。また、着衣部はストレッチ性があり、ソフトな風合いで、制菌加工及び防汚機能があり、家庭での洗濯も可能となっている。

 この冷却ベスト、本年度は限定1000着の販売を計画しており、5月30日より帝国繊維によって販売を開始。帝国繊維が出店する楽天モールでは、発売から5日目で一時売り切れとなり、その後、在庫が補充されて復活した。限定1000枚の販売ということもあるが、かなり実用的とみられているせいか、あるいは宇宙にロマンを馳せるマニアの購入なのかは定かでないが、人気の度合いが伺える。

 また、この製品はJAXAが企業や大学等と進めている公募型の共同研究制度「JAXAオープンラボ」を通じて作られたもの。この冷却ベストのように、今後もJAXAの最先端技術を応用した画期的な製品が生まれてくることに期待したい。