すぐさまAに「ハンセンの金髪がうちにあるから見に来いよ!」と電話。「いや、ハンセンはそんなに金髪じゃないだろ」とA。「じゃあ誰のだ!?」「可能性があるなら、(ジョニー・)エースじゃないか? 金髪で長髪はエースだけだし」「エースには触れてないぞ!」「ハンセンと控室は同じなんじゃないか? 何らかのカタチでハンセンに付着したエースの金髪が、ハンセンを介してお前に付いたとしか……」「でもハンセンにはロープで引っ叩かれただけだ!」「それだ! ブルロープの編み込みにエースの髪が挟まっていて、それがお前に!!」「そんなバカな!」「でもそうとしか考えられんだろ!」「うーん……そうだなっ!!」。Aも二日酔いだったようだ。
そのまま私はその一本の金髪をうやうやしく頂き、フィルムケースに入れて保存した。
そんなものも当然もうどこかへいってしまったが、二日酔いの頭でモノを考えることの無駄と豊かさを思い出す、令和5年の二日酔いの朝。あぁ、頭が痛い。
春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。この連載をまとめたエッセー集の第1弾『いちのすけのまくら』(朝日文庫、850円)が絶賛発売中。ぜひ!
※週刊朝日 2023年3月24日号