「俳句なんてあんなおじいちゃんばっかりじゃん」。母親に連れられ、初めて句会に参加する大学生の主人公・杏は、そうぼやく。ところが句会に一歩足を踏み入れると、イケメンがいたのである。杏と同い年の女の子もいる。そう、句会は老若男女が集い、語り合う場でもあるのだ。
 本書は1974年生まれの俳人による俳句入門書であり、ラブストーリーである。俳句初心者の杏の目を通して、句会の仕組みや俳句のいろはが語られる。同時に、杏の恋も進行。社会人一年目のイケメン・昴さんとの恋の行方が爽やかに描かれる。
 俳句はひとりでも楽しめるが、句会に参加することで、ひとりでは見えてこなかったことが見えてくる。素通りしていた句が、他の人の選評によって新たな輝きを持ち始めることもある。本書の舞台である「いるか句会」は実在する句会だ。堀本氏が主宰し、毎月一回、東京・荻窪で開かれている。読み終えたら、実際に参加してみるのもいいかもしれない。俳句の世界へ、ぽんと背中を押してくれる一冊である

週刊朝日 2014年9月12日号