台湾に移住し、台南の塾で日本語を教える著者が、沖縄の楽器である三線を背にバイクを走らせ、各地を旅した記録。人々と交流し、4年の間に見聞きしたものを、本島南端からぐるりと一周するように紹介する。
 バイクで3日あれば一周できる台湾だが、さまざまな貌をもつ。台東には、ウミガメが産卵に訪れる、生態系が豊かな海岸があり、古くから住む原住民族は、「海は私たちの冷蔵庫だ」という。だが、すぐ傍には巨大リゾートホテルが建ち、反対運動が起こっている。他方で、道端の寄付に快く応じる若者の姿もあり、「強さよりも弱さと優しさが、美しさよりも素朴さが、ここでは大切にされているように思う」と著者。原住民族タオの住む離島にも行く。ここには海という異界への入り口である浜辺に、聖なる感覚を抱いてきた人々が住み、30年ほど前に建てられた放射性廃棄物処理場の廃棄物を「悪霊」と呼ぶ。
 不登校、大検を経て大学院を修了した著者の柔らかな視線と軽やかなフットワークがある。様々な動物が鼻を突き合わせるらしい道教の廟など写真も楽しい。

週刊朝日 2014年9月12日号

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