1000冊を超える本の装丁を手がけてきたデザイナーによるブックガイド。自らが関わった本の中から100冊を厳選し、心を惹かれた「ほんの数行」を紹介している。
 まずは「この本の装丁も和田誠だったのか」という発見と驚きがあった。例えば、『パパラギ』。初めて文明に触れたサモアの酋長の文明批判が書かれたこの本は、エキゾチックな装丁が魅力的で書店でも特に目立っていた。著者は表紙に描かれたものは「サモアふう模様」だと説明し、「彼の言葉は少しも古くなっていない上に、ますますぼくたちにとって耳が痛い言葉」だとこの本の魅力を伝える。
 著者自身が出版を提案し、編集にまで携わった『赤塚不二夫1000ページ』、谷川俊太郎の感覚に「触発され」て「絵がひとりでに変化する」ことを経験した『ナンセンス・カタログ』。各作品を紹介する著者の言葉は、本の制作に関われたことへの喜びの気持ちに満ち溢れている。
 本の紹介にとどまらず、書き手とのエピソードなど舞台裏話までが盛り込まれており、とても楽しめる内容となっている。

週刊朝日 2014年9月5日号

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