失業中の青年、クレイは求人ビラを見てペナンブラ氏の書店で働くことにした。この店、ほとんど客が来ないのに24時間営業、並んでいるのはネット検索にひっかからない世の中にないはずの本ばかり。仲間たちと共にこの奇妙な書店の秘密を探り始めた彼は、500年間誰も解けなかった巨大な謎に行き当たる。本をめぐる冒険ファンタジーである。
 クレイの仲間はコンピュータの天才、IT企業のCEOに、どんなものでも作れる映画の特殊効果のプロ。彼ら各分野のオタクたちが得意技を駆使して、手がかりを一つひとつ手に入れながら進んでいく。暗号で書かれた本、黒いローブの人々が集う秘密結社、地下に隠された図書館と、お約束の小道具もばっちりだ。だが、きょう日のファンタジーは謎解きもデジタル。グーグルの社員たちが世界中のコンピュータを総動員して立ち向かうのだ。
 そんなお手軽なとがっかりするなかれ。ラスト、主人公がひらめきと行動力でもうひとひねり、驚愕の答えにたどり着く。コンピュータと人間の頭脳のタッグによってのみ生まれる最強の知力にワクワクする。

週刊朝日 2014年7月4日号