慶応大学文学部を中退し、アダルトビデオ業界に飛び込んだ異色のAV監督・二村ヒトシさん。そんな二村さんが、コラムニスト・犬山紙子さん、お笑いコンビ「たんぽぽ」の川村エミコさん、ブロガーのはあちゅうさんら7人の"淑女"と恋愛について語りつくした対談集が今回紹介する『淑女のはらわた』です。



 20年もの間、監督としてAV女優と向き合ってきた二村さんですが、彼は「すべての人の心には穴が空いており、その穴がその人の欠点ともなるし、魅力ともなる」と言います。



「ある人が恋愛やセックスや人生の場面で『なぜ、そういうふうに行動したり、そういうふうに考えてしまうのか』の根っこには、その人が子供の頃の親きょうだい(※原文ママ)との関係が埋まっている。"悪い親"だったからとは限らない。もし理想的な家庭で育ったとしても子供の心には必ず穴が空く」(『淑女のはらわた』より)



 しかし、そんな穴とも良いバランスで付き合っている人たちもおり、なかでもうまく付き合っている女性は、人生でも成功していることが多いと言うのです。そんな彼女たちの共通点は、"自分のことを肯定できている"ということ。心に穴をあけながらも、それを肯定できているのです。



「女性は自分のことを肯定できていると、恋愛やセックスが、わりとうまくいく。あるいは、うまくいかなくても、それほどダメージを受けない。ここでいる"自分を肯定"というのは、ナルシシズムで"自分が好き"というのとは違う。



 自分を好きというのは、"こだわり"や『がんこすぎて恋愛したくてもできないこと』や『恋愛やセックスに依存すること』に近い。



 自分を肯定するというのは『相手を愛すること』や"あきらめ"に近い。あきらめるというのは悪いことではなく、自分の心の穴を把握しているということで"自分に必要ないものは、いらない"と知ることに近い」(『淑女のはらわた』より)



 うまくいっている女性は、相手を受け入れ、また、ある種のあきらめを抱いているそうです。つまり、自分に穴があるということを自覚することで、モヤモヤしている恋愛や人付き合いをスッと受け入れることができるのです。



 異色のAV監督が語り尽くした恋愛論は、専門用語が少なくとてもわかりやすいもの。これまで多くの女性を見て来たからこそわかる女心。女性だけでなく、男性にとっても参考になる話が満載の一冊だといえます。