著者の名は「少年」なのに「アヤ」。プロフィールには「平成元年、消費税とともに生まれる。(中略)どこかに向かって走っている」という、プロフィールと呼ぶにはあまりにも大ざっぱな言葉が並ぶのみ。なんだかつかみ所がない人物のように思えるが、そんな印象とは裏腹に、彼の発する言葉は読者のこころを鷲づかみにする。この時代を生きることの不安と喜び。愛することの希望と絶望。それらがない交ぜになって、紙上に叩きつけられてゆく。
 本書には、もともと日記ブログを書籍化するはずが、ほぼ全編書き下ろすことになったという経緯がある。新しく書かれた文章からは、日記ともコラムとも違う、私小説の匂いがする。アイドルにハマり、突然の体調不良に襲われ、露出狂に遭遇し、ネットオークションで日銭を稼ぐニートになり……それらは極めて個人的な出来事である。しかし「私だけの試練、私だけのカルマ、私だけの戦闘を越えて」で終わる本書は、「私」を超えた先にある「私たち」の試練、カルマ、戦闘へと接続し、共闘を促しているように思えてならない。

週刊朝日 2014年5月9日-16日号

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