『MORE』はファッションのページにも力を入れていた。「自立する女性」にふさわしい服とは何かという視点から、新しいファッション像を提示していた。そこで紹介されていたのが、ニューヨークのモードで、カルバン・クラインの服は麻子にとって憧れの服になった。
親に、「集英社に入るためには、カルバン・クラインの服を着て面接をうけなくてはならない」と主張し、上京したおりに買ってもらう。
マスタードカラーのシルクのブラウスとタイトのスカートだった。その戦闘服に身を固め、麻子は集英社の面接に臨んだ。1979年の暮れのことだった。
以下次号。
下山 進(しもやま・すすむ)/ ノンフィクション作家・上智大学新聞学科非常勤講師。メディア業界の構造変化や興廃を、綿密な取材をもとに鮮やかに描き、メディアのあるべき姿について発信してきた。主な著書に『2050年のメディア』(文藝春秋)など。
※週刊朝日 2023年3月24日号