都電を1両借り切って撮影がスタート。三ノ輪橋から早稲田まで、約1時間移動しながら撮影
都電を1両借り切って撮影がスタート。三ノ輪橋から早稲田まで、約1時間移動しながら撮影
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撮影位置を変えながら、“身体で感じ、撮り続ける”
撮影位置を変えながら、“身体で感じ、撮り続ける”
アドバイス中の大西みつぐさん
アドバイス中の大西みつぐさん
目の前に飛び込んでくる一瞬に反応し、シャッターを切る
目の前に飛び込んでくる一瞬に反応し、シャッターを切る

 「アサヒカメラ」が新たにワークショップをスタートさせた。その第一弾が、「大西みつぐワークショップ フィジカル・スナップショット」だ。タイトルの通り、“身体で撮る”ことをテーマに掲げ、大西さん自身、「これまでにない体感するワークショップにしたい」と意気込んでいる。
 まず20名の参加者を前に、大西さんは実習の趣旨とねらいを説明した。
 従来のワークショップでは、撮影のやり方やノウハウ自体を講師が丁寧に説明することが多かった。しかし、ここでは講師主導ではなく、参加者それぞれが“感じて反応する撮影”を自発的に学んでいくことになる。第1回目の実習では、都電に乗って車窓から見える光景を撮る。

 「通り過ぎていく風景。その一瞬一瞬を切り取っていくこと。目に続々と飛び込んでくるものに、どう反応していくか。撮影者の意志を超えて、カメラのメカニズムとレンズがとらえるものがある。そこを発見してほしいんです」
 街をスナップするとき、撮影者は目の前の光景にストーリーや構図の面白さを感じて、シャッターを切っている。その写真は、撮る者の意図が入り込んだ、“作られた一枚”でもある。もちろん、それが写真を撮る楽しみの一つであるわけだが、今回はそういった“作画”をできるだけ排除していく試みなのだ。
 「本来、スナップショットはそうした身体感覚で撮るものでもあったはず。“こう撮るべき”という方向はありません。みなさんの知恵と機材でシャッターを次々と押してください」

 都電を借り切り、三ノ輪橋停留所から終点の早稲田停留所まで、約1時間の撮影を行なった。都電のレトロな空間と、ほぼ全員が初体験であろう貸し切り車両の雰囲気に、参加者のテンションは盛り上がり、出発時には歓声が湧いた。
 走りはじめると、それぞれ、撮影位置を移動させながら、軽快にシャッター音を響かせていた。時折、大西さんからのアドバイスが入る。
 「だんだん、ねらいたくなって来ていませんか? 最初はシャッターを切るリズム、快感で撮っていたのが、写真に“整合性”をつけたくなってきますよね。以前に撮った、見た、よい写真をなぞろうとする。それは、僕もそうなりがちなんですよ」
 帰路は、それぞれが都電に乗って三ノ輪橋を目指した。車窓から見える風景にも、その時間には斜光が当たり、行きとは違うドラマチックさが加わる。途中、気になった場所があれば、下車するのも自由。下町スナップを楽しみながら、この日の実習は終了した。

 次回は、この日の写真から10点以内をプリントにして持参。その講評後、今度は銀座周辺の撮影実習へ向かう。
 「次は今日と真逆で、みなさんをある空間にとじ込めて、そこで撮影してもらいます」と大西さん。
 次回も、新しい撮影感覚が体験できそうだ。

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