『ルッキング・フォワード』クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング
『ルッキング・フォワード』クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング

 1999年の10月、CSNYは『ルッキング・フォーワード』とタイトルされたアルバムを発表している。4人が顔を揃えたスタジオ録音作品としては88年の『アメリカン・ドリーム』につづく通算3作目となるもの。インナースリーヴのクレジットには採用されたテイクの録音時間まで明記されているのだが、それらから逆算すると、すでに96年には話がまとまり、曲づくりなどの準備作業がスタートしていたようだ。

 あの『デジャ・ヴ』から、じつに29年。リリース時点での年齢は、クロスビーが58歳、スティルスが54歳、ナッシュが57歳、そしてヤングは53歳。たっぷりと歳をとり、いくつもの山や谷を乗り越えてきた彼らは、しかし、ここであらためて深い友情や独特のケミストリーを感じさせる、豊かな音の世界をつくり上げることに成功した。『アメリカン・ドリーム』にあったデジタル的なサウンド処理はほぼ姿を消し、初期なオーガニックな感触も取り戻している。

 ニール・ヤングが提供したのは、タイトル・トラックの「ルッキング・フォーワード」と「スローポーク」、「アウト・オブ・コントロール」、「クイーン・オブ・ゼム・オール」の4曲。「クイーン~」ではスティルス作品には欠かせないパーカッション奏者ジョー・ヴァイタールの参加を得て珍しくラテン的な色彩を打ち出しているが、その他の3曲はいずれもアコースティックな作品。50代半ばを迎えた芸術家の日々の暮らしをテーマにした、地に足をつけた感じの歌詞が印象的だ。特徴的なエレクトリック・ギターに関しては、スティルス作の「シーン・イナフ」などで聴くことができる。

 そのスティルスはオプニングの「フェイス・イン・ミー」など3曲、クロスビーは社会派の視点からロックの歴史を描いた著書『スタンド・アンド・ビー・カウンティド』と同タイトルの曲など2曲、ナッシュは優しさにあふれた「ハートランド」など2曲を提供。最後には、(おそらくナッシュの発案で)リッキー・ネルソン・バンドなどのメンバーだったデニー・サロキンの「サニベル」が収められている。[次回1/14(火)更新予定]

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大友博

大友博

大友博(おおともひろし)1953年東京都生まれ。早大卒。音楽ライター。会社員、雑誌編集者をへて84年からフリー。米英のロック、ブルース音楽を中心に執筆。並行して洋楽関連番組の構成も担当。ニール・ヤングには『グリーンデイル』映画版完成後、LAでインタビューしている。著書に、『エリック・クラプトン』(光文社新書)、『この50枚から始めるロック入門』(西田浩ほかとの共編著、中公新書ラクレ)など。dot.内の「Music Street」で現在「ディラン名盤20選」を連載中

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