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 生後2カ月でわが家へ迎えた柴犬チロ(写真、6歳)は、超がつくビビリ。警戒心も強く、家族以外の人間を一切受け入れない。散歩も早朝や雨の日など人の少ない時は喜々として歩くが、人の多い時間帯は家の敷地から出るのさえ嫌がる。他の犬も苦手だ。
 室内飼いでほとんど吠えず、おとなしいが、番犬としては有能で、巡回でいらしたお巡りさんに吠え、「お宅は大丈夫そうですね」とお褒めの言葉を頂いた。
 子犬の時から、一生懸命他人と接触させたり、公園に連れていったりしたが、いつまでたっても性格は変わらない。「おうちが一番」で、どこへ連れていっても喜ばない。家の外では、ご褒美のオヤツも食べない、水も飲まないの筋金入り頑固娘。それでも私たち家族にとっては最高にかわいい。
 夫の出勤前にチロと早朝散歩をするようになってから、日本の四季の移ろいを毎日、毎年感じられるのがとても新鮮だ。
 冬は寒くて地面も凍る。それでも必ず春にはスミレが咲き、ツクシが生える。桜の開花も待ち遠しい。やがて雑草の勢いが増してきて、厳しい夏が来る。
 どんなに猛暑でも5時起きの散歩は心地よい。日が暮れるのが早くなって、夕方の散歩に出遅れると、あっという間に日が沈むようになり、秋が来る。だんだん山が紅葉に染まり、枯れ葉が舞い、木枯らしが吹いて、また冬が来る。
 犬を飼う前は、暑くても寒くても雨でも犬を散歩させている人を見て、大変だなぁと思っていた。が、飼ってみると、散歩は犬を連れていくのではなく、犬に連れていってもらっているのだと実感する。
 中年夫婦は、チロのおかげで前よりうんと健康になった。どうか一日も長く元気でいて、私たち夫婦を散歩に連れていっておくれ。

(小泉奈乙子さん 神奈川県/51歳/アルバイト勤務)

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