経営者新書ってのができたのか。この恥ずかしげもない名前はどうだ。経営者に憧れるおっさんが読むためのものか。日経プレミアシリーズも、なんか企業の部長クラスが好んで手に取るようなつくりになってるが、こちらのほうはもっとアラレもない。
 で、経営者新書ときて著者が麻生泰! 麻生太郎の弟の泰(麻生財閥総帥)が薄毛の本を出すって、いかにも幻冬舎的な狙いの本だネー、などと考えたが、著者の麻生泰は麻生財閥とは関係ないお医者さんだった。読んでみると、目からウロコの話がいっぱい出てくる。薄毛で悩んでいる人は光明と絶望を同時に味わうのではないか。
 今市販されてる育毛剤のたぐいの98%は「効かない」と言い切る。カツラを被るほど自分の毛は減っていく、とか、シャンプー、サプリ、発毛・育毛サロン、スカルプケア、植毛といったたぐいのものが「いかに金だけかかって効果がなくて薄毛の人を落胆させる結果になるか」を畳み掛けます! 巷にはびこる「発毛・育毛詐欺」に気をつけろ、ですって! 和田アキ子が「もう悩み無用~!」とシャウトする、アレはダメなのか! 藁をも掴む気持ちでいる人びとはいったいどうなる!
 医療機関じゃないところが薄毛治療を行うのは日本だけ、ってのも「なるほどなー」と思う。病気じゃなくて、美容の範疇に入ってるもんなあ、ハゲ問題は。そうではいけない、と麻生さんは強く言う。ハゲで消極的になって運動不足になり、そこから深刻な疾病に発展しかねない、と。風が吹けば桶屋が儲かるような話だが、わかる気はする。ハゲによるうつ病だってあるだろう。
 麻生さんによれば、「薄毛には薬」だそうだ。服用によって薄毛がこんなに!という証拠写真もある。しかし、ハゲだったのにこんなに生えてきた、という写真そのものがうさんくさく見えるのは気の毒である。とにかく薄毛は医者。そのためにもこの本の一読をオススメします。

週刊朝日 2013年9月27日号