こうして世界の王室の姻戚関係とか書いた本書を読んで知ると、「日本の皇室ってのはずいぶんイレギュラーな形のもんなんだな」と思わされます。
 ヨーロッパなんか国をまたいで王室が結婚でつながっている。日本に住んでると「王様が外国人と結婚していいんですか」なんて気持ちがつい芽生えたりしがちで、それは「外国人の血が混ざる」的なものもあるし、「いろいろ面倒なんじゃないの」というのもある。フランス人とオーストリア人とスペイン人、見た目だけじゃ見分けづらいが、実際は言葉も習慣もちがうし食べ物の好みもちがうし、結婚なんてたいへんだと思う。が、そんなたいへんさを吹き飛ばすほど「王室の存続と発展が大事」で、そのためには外国人との結婚なんて当たり前なわけです。
 いくら島国だからといって、日本の皇室が皇太子妃を外国から迎えるというのは考えづらい。桓武天皇のお母さんが百済から来たっていっても祖先の話であって「百済から嫁にきた」わけじゃないし。でも西欧の王室の場合は外国人なんかよりも、身分のほうが問題らしくて、貴賤結婚なんていう言葉を見ると「それほど身分が大事かよ」とも思う。
 というような感じで、王室というのは結婚→生殖によって続いていき、カネの力や戦力で栄えたり滅びたりするという、すごーく下世話な結びつきのシンボルみたいなものだ。自分とは関係ないだけに、それをワクワクと見てしまう。
 じっさい、スキャンダルのたぐいは山ほどある。この本でも王室のスキャンダルは淡々と列挙されていくのだが、オランダ王室のところでいきなり(と感じる)「スキャンダルの総合商社」と強く言い出したのでちょっと驚く。そこまで言われるほどひどいのか!……と読んでみると、たしかにけっこう乱れている。ユリアナ女王は、夫のベルンハルト殿下が愛人を作り妻妾同居の時期があったとか。日本は今のところ、良識的な皇室なのでよかった。

週刊朝日 2013年8月30日号

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