ニコノスIVを右手前に、生産終了を知り、慌てて買いそろえたというニコノスRSが5台。レンズはフィッシュアイ13ミリF2.8とマイクロ50ミリF2.8がお気に入りで、ほかに20~35ミリF2.8もある。50ミリは2倍のテレコンを付けて撮ることも多いという。スピードライトは、ニコンSB104とイオンZ-220。多忙な日々のなかでダイビングと水中撮影が生きがいというだけあって、装備は万全だ。
ニコノスIVを右手前に、生産終了を知り、慌てて買いそろえたというニコノスRSが5台。レンズはフィッシュアイ13ミリF2.8とマイクロ50ミリF2.8がお気に入りで、ほかに20~35ミリF2.8もある。50ミリは2倍のテレコンを付けて撮ることも多いという。スピードライトは、ニコンSB104とイオンZ-220。多忙な日々のなかでダイビングと水中撮影が生きがいというだけあって、装備は万全だ。
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中村征夫さんとは親しく、一緒に潜ることもある。師匠と呼んでいる中村さんをパプアニューギニアの海中で撮影
中村征夫さんとは親しく、一緒に潜ることもある。師匠と呼んでいる中村さんをパプアニューギニアの海中で撮影
国内外多くの海に潜っている岡本さんが、世界でいちばん美しいという紅海。透明度は抜群で独自の生態系が守られ、珊瑚礁が2000キロも続いている。ソフトコーラルのウミトサカにキンギョハナダイが群れている。原色の世界だ
国内外多くの海に潜っている岡本さんが、世界でいちばん美しいという紅海。透明度は抜群で独自の生態系が守られ、珊瑚礁が2000キロも続いている。ソフトコーラルのウミトサカにキンギョハナダイが群れている。原色の世界だ
被写体では魚の群れが好きだという岡本さん。美しいフォーメーションでなめらかに視界を横切っていく姿になんともいえない優しさを感じるという。紅海の水深約20メートルで、ムレハタタテダイをフィッシュアイ13ミリで撮影
被写体では魚の群れが好きだという岡本さん。美しいフォーメーションでなめらかに視界を横切っていく姿になんともいえない優しさを感じるという。紅海の水深約20メートルで、ムレハタタテダイをフィッシュアイ13ミリで撮影

――写真はいつからですか

 本格的に撮るようになったのは中学生のころで、農林省勤務だった父の関係でクアラルンプールに2年間滞在したときです。原色の美しい世界に衝撃をうけました。当時の日本は終戦から10年くらいで街はくすんだモノトーンばかり。それが一気に別世界になった。マレーシアはイギリスから独立した直後で、建物や商店の看板なんかもカラフルで洒落ていました。毎日のように父のお下がりのカメラでカラースライドで撮っていました。

――水中撮影は?

 スキューバダイビングを始めた外務省研修生のときからです。藤沢で育ったので素潜りはやっていたのですが、タンクを背負ったとたん、呼吸ができる余裕から「あれも撮りたい、これも撮りたい」と欲が出た。最初に買ったのは、ニコノスIII。当時は、照明用のバルブを詰め込んだ布袋を腰にさげて潜っていました。それからニコノスIV、Vを経てRS。値段は高かったけど、小遣いをはたいて買いました。

 1980年、エジプト赴任で紅海の美しさを知ったことでダイビング熱に拍車がかかり、水中写真にのめりこんでいった。音が聞こえないのがいいんです。日々アドレナリンを放出してきついテンションで働いているので、陸上とは百八十度異なる無音の世界に身を置くことで、精神のバランスを保っているのかもしれません。水の中にいると謙虚になれる。ぼくにとっては、終生の救いです。どんなに忙しくても、年2回は国内外の海に潜りに行っています。

――RSの魅力は?

 やはり水中撮影に特化した性能です。被写体もこちらも揺れているし、ダイバーは海中の岩や生物に触れてはいけないという鉄則もある。そんな厳しい条件下で一瞬で被写体を切り取るには、一眼レフという仕様が適している。レンズも水中専用ですから視界が明るく、ピント合わせやフレーミングがしやすい。こんなにいいカメラはもう出ないでしょう。2001年に生産終了のニュースを知ったときはショックでしたね。そしてメンテナンスサービスも06年で終了と聞いて、慌てて予備を買い集めたんです。死ぬときまでに、手元に1台は残っていないと困る(笑)。ダイビングと水中撮影はぼくの最大の楽しみで、そのために働いているようなものだからお金は惜しくなかった。ただ最高峰のカメラを、アマチュアのぼくが5台も買い占めているのはよくないという気持ちもある。RSが手に入らなくて困っているプロの方には、無償でお貸しするつもりです。

――デジタルへの関心は?

 利便性はすごい。枚数制限もないし、すぐに結果が見られて調整できますしね。でも、ぼくはフィルムからは離れられない。デジタルでは微妙な色合いが表現しきれない気がします。そもそも、自然の色を「01」の電気信号に置き換えてしまうことには耐えられないんですよ(笑)。ある映像関係の方が、「デジタルは再現力、アナログは表現力に優れている」とおっしゃった。まさにその通りです。ありのままを写すだけでは、表現にならない。フィルムだからこそ、どうやったら海の世界をきれいに撮れるのか、工夫のしがいがあると思います。ただ、1回に36枚しか撮れないのはきつい。しかもぼくの場合、たいてい37枚目にすごいチャンスがやってくるんだな。(笑)

 たくさん撮って、ある程度テクニックが身についてくると、プロとアマの歴然たる差がわかってきますね。尊敬している中村征夫さんの写真展を見て、「がんばれば、自分にも撮れるかな」と思えるような作品は絶無。まあ、「実力の差がはっきり感じられるほど、おれも写真が上達したんだ」と前向きに解釈するようにしています。(笑)

※このインタビューは「アサヒカメラ 2007年3月号」に掲載されたものです