嗣永桃子(カントリー・ガールズ/Berryz工房)、夏焼雅(Berryz工房)、鈴木愛理(℃-ute)の3人から成るスペシャルユニット・Buono!。8月25日 日本武道館にて約4年ぶりの単独公演【Buono! Festa 2016】を開催した。
<Buono!4年ぶりの単独公演 今求められた理由がよく分かる圧倒的アクト>
開演とともに武道館に轟く生のバンドサウンド。これまでもBuono!のライブを支えてきたバックバンド・Dolceは、様々なアーティストのサポートやサンナナニのメンバーとしても知られるひぐちけい(g)を新たに加え、熱量と音圧の増したロックサウンドで本日の主役である3人とオーディエンスを鼓舞。「今夜はRock 'n' roll Hero! 本物のブドーカンでLive!」1曲目、間違いなくここ日本武道館で鳴り響かせる為に生み出された新曲「ロックの聖地」から3人のボーカルはロックンロールしており、満員のオーディエンスも大声で叫びながらザッツ・ロックコンサートの光景を創造していく。近年はアイドルがロックを歌い叫び、それに呼応して観客が暴れ回る光景も珍しくなくなったし、その現象を日本から世界中まで伝染させているアイドルユニットだって存在しているが、ムーヴメントになるずっとずっと前からソレを高いクオリティでお届けしていた3人組がいた事実、その3人組が4年ぶりの単独公演で他の追従を許さないスキルでソレを体現してる光景は、驚愕と呼ぶに相応しい。
Buono!のファンでない者からすれば、4年も大きな活動のなかったアイドルユニットがいきなり日本武道館ワンマンを行う理由も、それに歓喜して興奮している人々がいる意味も理解しづらいかもしれないが、ライブを観たらよく分かる。Buono!は、アイドルとロックの融合がスタンダードとなり、その成功者が次々と生まれている今だからこそ認識してもらいたい存在であり、もっとファン視点に立てば「Buono!を知らずにソレは語れない」という想いが溢れて当然の状況ゆえ、今回の明確な復活劇は大歓迎されたのではないだろうか。だって、楽曲もパフォーマンスもめちゃくちゃ良いんだもの。これを今、生で体感したいし、させたいという想いがBuono!界隈でスパークするのは当然である。
<嗣永桃子、夏焼雅、鈴木愛理、それぞれの変化と今を実感させる構成>
ゆえにこの瞬間を待ち侘び続けた者たちの熱量は凄まじく、全楽曲で喝采の雨が3人のもとに降り注いでいたのだが、同公演で見事だったのはBuono!自体のパフォーマンスはもちろんのこと、嗣永桃子、夏焼雅、鈴木愛理、それぞれの変化と今を実感させる構成が成されていたところだ。例えば、夏焼雅はこのイベントで新グループのお披露目ライブを展開。4年前はBerryz工房の副キャプテンとして活躍していた彼女が、同グループの無期限活動停止を経てようやく新メンバーと新たな一歩を踏み出した瞬間である。そのユニット名はPINK CRES.(ピンククレス)。ダンスも巧くセクシーな二瓶有加、雅いわく天然ちゃんキャラの小林ひかるといった新メンバーと並び、DJを従え、本格的に洋楽色の強いクラブミュージックユニットとして歌い踊っていた。
また、嗣永桃子も4年前はBerryz工房のメンバーとして活躍。「許してにゃん」等の流行語に象徴されるようにハロプロきってのトリックスターとして大暴れしていたが、現在は自分以外全員若手のカントリー・ガールズのプレイングマネージャーとして、持ち前のキャラクターは健在ながらもメンバーを牽引&教育していく立場にいる。そんな愛弟子とも言えるメンバーたちと何があってもアイドルらしく、笑顔で楽しくステージに立ち続ける矜持を感じさせるアクトで武道館を扇情。鈴木愛理は4年前から変わらず℃-uteのエースであるが、来年6月での解散を発表した直後であり、ある意味で時代の変化を誰よりも痛感している心境でのステージだったかもしれない。しかし彼女は12年間苦楽を共にしてきたメンバーと、Berryz工房が欠けた後のハロー!プロジェクトを引っ張ってきたグループとしての凄み、そして誰よりも屈託のない眩い笑顔を溢れさせていた。
<「4年間たっぷり溜まった愛をお届けしたい」夏焼雅の誕生日お祝いも>
矢島舞美、中島早貴、岡井千聖、萩原舞、山木梨沙、森戸知沙希、小関舞、梁川奈々美、船木結と、℃-ute&カントリー・ガールズメンバーがBuono!曲「ホントのじぶん」を歌い届けると、三者三様に人生山あり谷ありを体現してきた3人が再びステージに集結。「4年ぶりですよ。……なんでこんなに放っといた?」「勝手に「解散した」とか言われててさ、再結成みたいなこと言っている人いるけどさ、解散してないよね?」「してないよ。活動がなかっただけ」と笑いを誘いつつも、「個々にスキルアップしてね、4年経ってこの日本武道館に立てた。本当に嬉しい事です!」と喜びを語り、「今日は4年間たっぷり溜まった愛をお届けしたいと思います!」とこれまた満面の笑みで愛理が告げたように、すべての楽曲に4年分の愛とエモーションを盛り込んで歌い上げていく。特に久しぶりの新曲として9月21日にリリースされる「ソラシド~ねえねえ~」では、あれから更に進化した三者三様のボーカルスキルが遺憾なく発揮され、最後のハイ&ロングトーンは「衝撃」と言っていいレベルだった。
また、この日は、夏焼雅の誕生日ということで、サプライズで「ハッピーバースデイトゥユー」のシンガロングとバースデイケーキのプレゼントが。雅は「あっと言う間に24歳になっちゃった」と言いながら「私が(PINK CRES.の)リーダーになったわけですよ。だからこれから仕切ったりすることもあると思うし、努力することがたくさんあるので、皆さんに見守ってほしいなと思います! ありがとうございまーす! 嬉しい!」と本当に嬉しそうにコメント。気の知れたメンバーと武道館規模のファンに囲まれてお祝いされることの特別さを知る彼女は、心底この瞬間を喜んでいる様子だった。
<3人のクリエイターズ・ファイル風インタビュー「巣鴨で買ってきたの」>
そんなメンバーにとって嬉しい演出も用意されていた同公演だが、その様々な用意の中である意味最も衝撃的だったのが映像コーナー。ここではスクリーンで3人のインタビューを流すのだが、その3人がなんと嗣永桃子、夏焼雅、鈴木愛理ではないと云うまさかの展開。そこに現れたのは、ハイパースタイリングアドバイザー・バースデー今月、お袋の味研究家・新星カツヲ、シークレットセキュリティサービスチーフ・柔五段というBuono!の関係者で(どう見てもバースデー今月=夏焼雅、新星カツヲ=鈴木愛理、柔五段=嗣永桃子だと思われるが、公式に明言されていないので、ここでも明言は避けます)、かのクリエイターズ・ファイル風インタビューが繰り広げられていく。
まずバースデー今月は「ちゃんももは結構大変でぇ、露出できないんだよね~。だから生地代がね、あの子はかかるんだよね~。お鈴ちゃんはね、最近ね、モデルちゃん? だから細かい注文が結構ね、入るようになったかなぁ。あの子は肌出してくれるから、生地代がかからない」と笑いを誘う。続いて厨房でインタビューを受けたカツヲおばあちゃんは、姿を見せただけで爆笑。フリル付きの割烹着姿を「巣鴨で買ってきたの」と自慢しながら「愛理ちゃんが一番美味しそうに食べていたのは……なすの煮浸しですかね? 3人ともそんなに好きかっていうぐらいね、食べてくれたの。忘れもしないよ……」と回顧。厨房で誰かが何かをガシャーン! と落としてしまい「こらぁー!!!!!!! 何をしてんのー!?」とアイドル(?)らしからぬ凄まじい形相で叫び出した場面は、みんなにとって忘れられない思い出になったことだろう。そして、黒服&サングラスという海外のボディガード然とした姿で現れた柔五段は、あらゆる質問に対して無言。しかし、Buono!の推しメンバーだけは「……ももち」とこっそりトランシーバーで伝えていた(遠くから「こらぁー!!!!!!!」とカツヲおばあちゃんが叫ぶ声が聞こえてくる細かい演出も)。
<Buono!=永遠の青春 大所帯のストリングス隊と「タビダチの歌」>
そんな想定外過ぎるサプライズを経て、ライブはいよいよクライマックスへ。「泣き虫少年」「カタオモイ。」「初恋サイダー」とタイトルからして甘酸っぱい、イノセントなアッパーチューンを全力で歌い上げていくのだが、「屋上から見たあの日の街も 思い出も今はここに置いてゆけ」「何度も何度も名前を呼ぶけど とどかない カタオモイ とどけたい いつか」そして極めつけの「キスをあげるよ」といったフレーズたちをひたすら疾走し続けるロックサウンドと共に叫ばれると、否応なしに我々の胸には青春が蘇ってきてしまう。しかもこの日の「初恋サイダー」、冒頭の「キスをあげるよ~」は愛理のアカペラで響かせ、そこに綺麗なピアノの旋律が乗り、「1!2!3!4!」という掛け声からギターがドラマティックに唸り出し、リズムと3人のボーカルが一気に走り出すという、青春をそのまま音楽化したようなアプローチでお届け。否応なしに「オイ! オイ!」と叫びながら拳を振り上げ、何なら涙も溢れさせずにはいられないグルーヴを創り出していた。青春パンクブームの終焉から久しいが、いくつになっても青春したい愛すべき永遠の少年少女たちは、ぜひともBuono!の音楽やライブに触れてほしい。
また、涙を誘ったと言えば、アンコール最後の「タビダチの歌」である。本編でも「うらはら」「君がいれば」「You're My Friend」で生ストリングスは登場したのだが、ここでは大所帯のストリングス隊がステージ後方を埋め尽くし、最初から最後までゴキゲンなロックサウンドを響かせ続けたDolce、武道館いっぱいの(老若男女の)キッズ、そのアイドル人生のすべてで青春を体現し続けている3人と、この日最もエモーショナルな一体感を生み出してみせる。「君と歌おう タビダチの歌 こわがらないで 歩いて行こう 一人だけど 一人じゃないさ 夢見る限り 夜は明ける きっと 思いはとどく」大袈裟でも冗談でもなく、この瞬間に心を救われた人間もいたに違いないと思わせる、圧倒的に青臭くてポジティヴな力。それがこの日の「タビダチの歌」、そしてBuono!の全力疾走なパフォーマンスには溢れていた。
<「みんながBuono!のことを忘れていたらこのライブは実現しなかった」>
どうしようもなく疲れ果ててしまうこと、年齢を重ねると共に諦めていってしまうこと、傷つき打ちのめされてしまうこと、生きていれば誰しもが衝突せざるを得ない現実。でもそんなものを痛快に、軽快に、爽快に、全力で笑い飛ばしながら「笑顔も泣き顔も 君のもの 好きも嫌いも 全部全部君のもの」と歌ってくれるBuono!の威力は絶大だ。ゆえに最後のシンガロングもあんなにも優しく響き渡ったのだろう。各々のグループ活動があるゆえ無理は言えないが、また観たい。またいつか青春を共に実感したい。それまでならまた4年でも何でも待ってやると思った人も(もちろん、もうちょい早く再会してほしいが)少なくなかったはずだ。それぐらい、Buono!は元気をくれた。我々に力をくれた。最後に、そんな愛すべきメンバー3人の言葉を記しておこう。
鈴木愛理「4年ぶりだったので、足が攣りまくっててね、みんな大丈夫かな? っていう感じなんですけど、8月だからなのか、皆さんのおかげなのか、熱気の凄い武道館ライブだったなっていう風に思います。4年間の間、活動はなかったけど、たくさん曲を聴いていてくれてたらいいなって思うんだけど、聴いてくれていましたかぁ!? (大歓声を浴びながら)ありがとうございます。今日売ってる写真で、すごく懐かしいBuono!マンっていうキャラクターを描いた写真がどっかにあるので、チェックしてみてください。ありがとうございました、鈴木愛理でしたぁぁぁ!」
夏焼雅「miyaは本当に久々のライブで、多分1年ちょっとやってなかったよね。それで、Buono!で久々の武道館が決まって「マジか」ってなったんだけど、本当に久々だったし、歌詞とか振りとかBuono!は難しいから「覚えられないかも!」とか(笑)。でも2人が助けてくれて……。そして、今日、24歳になりました! こんなにたくさんの人たちにお祝いしてもらえるなんて本当に幸せだなってしみじみ感じました。Buono!が久々、誕生日も迎えた、そして新グループのグループ名もやっと決まった! ……もうハッピー! またね、こういう機会があったらまたみんなと会いたいなって思いました。Buono!が来年も出来るといいなぁー。やっぱり楽しいからさ。そのときは皆さんも遊びに来て下さい! ありがとうございました、夏焼雅でした!」
嗣永桃子「普段はね、可愛さ100%のももちをお見せしている訳なんですけど……(ここでエーイング)ちょっと待って。「えー」はやめて。1万人の「えー」は心に響く。でも今日はももちの格好良い一面なんかもね、観て頂けたら嬉しいなっていう風に思ってリハーサルに励んできました。4年ぶりということで、4年のスパンでやるっていうのは、大統領選とか五輪とかさ、ワールドカップとかさ、世界中が注目するね、ビッグイベントが同じ期間な訳ですよ! なんですけど、みんながBuono!のことを忘れていたらこのライブは実現しなかったと思うので、本当に今日はこのステージで3人で歌って踊れたことをすごく嬉しく思っています。本日はありがとうございました、嗣永桃子でしたぁ!」
取材&テキスト:平賀哲雄
撮影:Jumpei Yamada
◎ライブ【Buono! Festa 2016】
08月25日(木)日本武道館 セットリスト:
[Buono!]
01.ロックの聖地
02.We are Buono! ~Buono!のテーマ
03.ロッタラ ロッタラ
[PINK CRES.(夏焼雅新グループ)]
01.Warning~未来警報~~ウワノソラ(メドレー)
02.Summer Wonderland
[カントリー・ガールズ]
01.恋泥棒(イントロLong.ver)
02.どーだっていいの
03.愛おしくってごめんね
[℃-ute]
01.都会っ子 純情
02.人生はSTEP!
03.Kiss me 愛してる
04.Danceでバコーン!
[矢島・中島・岡井・萩原・山木・森戸・小関・梁川・船木]
01.ホントのじぶん(Buono!曲)
[Buono!]
04.Independent Girl~独立女子であるために
05.雑草のうた
06.JUICY HE@RT
07.ソラシド~ねえねえ~
08.ガチンコでいこう!
09.マイラブ
10.Kiss! Kiss! Kiss!
11.うらはら
12.君がいれば
13.You're My Friend
[映像コーナー(インタビュー)]
ハイパースタイリングアドバイザー・バースデー今月
お袋の味研究家・新星カツヲ
シークレットセキュリティサービスチーフ・柔五段
[Buono!]
14.泣き虫少年
15.カタオモイ。
16.初恋サイダー(Album version)
17.Bravo☆Bravo
18.じゃなきゃもったいないっ!
19.れでぃぱんさぁ
20.MY BOY
21.恋愛□ライダー(□=ハート)
En1.ロックの神様
En2.ワープ!
En3.タビダチの歌