著者は及川賢治と竹内繭子によるユニットで、これまで多くのイラストや絵本を手がけている。彼らの最新作は、及川がTwitterに投稿した言葉に、可愛いけれど、どこかへんてこなイラストが添えられたものだ。絵本とはいえ、240ページもあり、ところどころに小さなメモ用紙のようなページが綴じ込まれるなど、造本に遊び心があってめくるのがとにかく楽しい。
 及川のつぶやきは、シンプルだが独特である。「薬の説明書は開封したとたんに顔を出してくる。目立ちたがり」「って影までかわいいなぁ」「販売機でジュースを買うと隅っこにばかり出てくる。あんなに広いのに」……なんだろう、このじわじわくる感じは。まるで現代の尾崎放哉か種田山頭火かといった趣があるではないか。子どもと大人の感性を自由に行き来する振れ幅がこの世界観を作り上げている。生活の中にあるちょっとした気づきと考察は、浅いようで案外深い。その意味で本書は、肩肘はらずに読める大人のための哲学絵本と言えそうだ。

週刊朝日 2013年1月25日号