「日本鳥学会」が設立されて百年。日本の鳥学を築いた人々と研究の軌跡をジャーナリストが一般向けに書いた。
 鳥類学は東京帝国大学動物学教室の飯島魁(いさお)によって始められたが、華族などの私財で研究が続けられたため、「貴族の学問」とも呼ばれた。国内外の現地調査と、標本などの保管に広いスペースが必要でお金がかかるのだ。
 鳥学者の自由奔放ぶりがおもしろい。初代会頭の飯島は、寄生虫学や海綿の研究で成果をあげたほか、「日本の水族館の父」とも呼ばれる多才な人で、鳥学の分野では日本初の鳥類図鑑を刊行した。2代目会頭の鷹司(たかつかさ)信輔は「鳥の公爵」と呼ばれ、目黒の鷹司邸では大きな禽舎でインコやオウム、キジなどが飼育されていた。そこでの観察を『小鳥の飼い方』などの本にまとめ多くの人に読まれた。3代目会頭の内田清之助はツバメの研究で知られ、農業害虫の増大防止に鳥が貢献していることを早くから呼びかけ、鳥類保護運動の始祖といわれている。近年の鳥学の成果も紹介され、学究の歓びが伝わる。

週刊朝日 2013年1月4-11日新春合併号

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