世界的な言語学者であると同時に、社会の不正に声をあげる知識人として名高い著者が、昨年以来のオキュパイ運動に応じておこなった講演やインタビューを集めた一冊。「1パーセント」の富豪ばかりを守る世界に対して「99パーセント」の一般市民がウォール街を皮切りにアメリカ中で抗議行動を巻き起こした。この前例のない事態を前に、今年で84歳になる著者は、現在の社会がどのようにつくられたのか、どうすればよい方向へ変えられるのかを穏やかに語りかける。
 アメリカの経済は1970年代に大きな転換期を迎えた。製造業の利益率が下がり、国外での生産が主流になるとともに、国内では金融部門が急激に力をつけ、そこへ富が集中する。政治はこの流れと結びついて、ごく一部の大企業にのみ有利な政策を推し進めてきた。著者は60年代に無名の人々が始めた公民権運動が大きなうねりとなった経緯を示して、普通の市民が自らの手で世論を変え、政治を動かすよう励ます。デモの現場を捉えた写真が臨場感を添える。

週刊朝日 2012年12月21日号

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