驚いたときは「まあ」、語尾には「だわ・のよ」。女性だけが使う「女ことば」の存在を当たり前と思っている人は多いだろう。女ことばは日本語の伝統、また優しく上品な「女らしさ」から自然に生まれるものと言われる。だが実際は、今も昔も、女性がみんな女ことばを使っていた時代などない。本書は、女ことばと呼ばれるものが現れ、変遷する様子、そして国語の成立や女性の地位と深く関わるさまを、多様な実例とともに丁寧に解き明かしてくれる。
 女は話しすぎるな、と説くマナー本は鎌倉時代からあり、室町時代には宮中の女性たちの間で「髪」を「お髪(ぐし)」と呼ぶなどの女房詞が発達、これが江戸時代に入ると女の使うべき言葉とされるように。明治時代には、国語=標準語を定める過程で、男子学生の言葉は標準語に採用されたのに対し、「よくってよ」といった女子学生の言葉は正しい国語から排除されて、性的な響きを帯びた「女ことば」に押しこまれてしまう。では戦中、終戦直後は? 日本語を問い直すきっかけになる本。

週刊朝日 2012年10月12日号

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