震災からもう2週間以上が経とうとしているのに、いまだに世間は自粛ムードだ。そして私も日々の締め切りをせっせとこなしつつも、どこかが割り切れていない。
一部には震災支援のための小説を書こうという動きもある。私も書けるものなら書きたい。けれどこの圧倒的な悲劇を前にすると、うまく言葉が出てこない。周囲の何人もの物書きのかたがそういう状態のようだ。これ以上哀しい小説は書けない。そしてこんな哀しい時なのにラブラブの小説を書くのも何かうまく感情が噛み合ない。
それなのにツイッターの小説書きさんたちは大変エネルギッシュだった。文字制限いっぱいの140字で、震災当日から超短編小説を書き続けている。
私は3月19日から、その小説群の中から、震災をテーマにしたものを集めていき、先日100編を超した。とても短い物語なので、ほんのちょっとした気分転換にはちょうどいいと思ってまとめている。
集め出す少し前に、私はとある記事を目にしていた。避難所に何冊もケータイ小説を積んで「これが慰めになっている。私も小説を書きたい」と語っている中学3年生の女の子の写真だった。それを読んだ時、いちケータイ小説書きとして、何かをしたい、そんな気持ちが強くなった。
いろいろな立場の人がいる。被災して小説を読むどころではない人も、そして震災の影響をあまり受けていない人も。
ツイッターは誰でも無料で投稿できる。被災したこの女の子がいつでも書き込めるように、私はこの小さな小説集をまとめていこうと思っている。
福島で、東京で、この小さな作品集を読んでくれている人がいる。こんな時に小説はとても優しい。勇者や魔法使いなど架空の人物までもが震災の支援に向かっていく姿に、まとめている私も泣きそうになることが何度もあった。
最後にひとつ私のお気に入りの作品をご紹介......。
「ほんとうに行くんですかあ?」とぼやくルドルフの言葉に彼はにやりと笑って答えた。「馬鹿野郎。俺たちが年末にしか活動しないと思ってやがんのか?いいか、俺たちはな...」そこまで言って、老人は赤い帽子をしっかりと被り直す。「いつだって、良い子の味方なんだよ。忘れるな」
(@bttftag さんの作品)
▽「大震災・心に残る140字の物語」
光浦靖子、50歳で単身カナダ留学 不安は「飛行機の間くらい」「ゼロ点経験できてよかった」〈酒のツマミになる話きょう出演〉