私には、いつか名刺に入れてみたい肩書きがある。それは『職業・審査員』だ。
審査員を生業にしている人というのは、いそうでいないけれど、審査を知り尽くしたプロの審査員という職業があったら面白いんじゃないだろうか。ステージに上がった人の一瞬の目線の動きで「ああ、この人は最終審査に残るな」などと見抜けるような、そんな審査の達人に、私はなりたい。
今日までいくつかの審査員をこなしてきた。『ギャルソンカフェオーディション審査員』『清里文学賞審査員』『an・anオトコのカラダ審査員』などだ。でもまだ10もない。職業・審査員と名乗るにはほど遠い現状である。
審査員というのは本当に特殊な仕事だと思う。審査の結果によっては、その人の人生を変えてしまいかねないのだから。
たとえばタレントオーディションだったら審査に合格した人はその日以降、タレントとなる。文学賞を受賞すれば、その日以降は作家と名乗れる。人をその次の世界へと連れていく切符を審査員は持っているようなものだと思う。
もちろん審査員といっても、決して百発百中ではない。鳴り物入りでデビューしたタレントが泣かず飛ばすだったこともあれば、満場一致で決まったグランプリ作品が実は盗作だったなんてこともある。でもだからこそ何度も場を重ね、できるだけ精度の高い審査ができる人間になりたい。
審査員という仕事で最も盛り上がるシーンは、やはり、最終選考で、他の審査員と意見が食い違ったときだろう。先日のan・anオトコのカラダ審査会場も意見が割れ、
「私は絶対この人が優勝だと思うんです!」
「いやいやこの人は腹筋の鍛え方が甘いでしょう?」
などと議論が続いた。皆が納得できる優勝者を決めるまでスリルある時間が続く。これが病みつきになりそうなくらい楽しいのだ。
しかし、いったいどのくらいのレベルで職業・審査員と名乗ることができるだろう。個人的には年間10本以上の審査に関わったら名乗ってもいいのではないかと思う。私は去年、審査員には3回なった。もっと数を増やし、名実ともに『職業・審査員』となれるよう、精進するつもりだ。